野次馬トーク(その10)
第76回箱根駅伝を振りかえって・野次馬大賞発表!
        
         (今回も長いので、ダウンロードしてから、ゆっくりお読みください。)

【駒沢念願の初優勝!】

野次郎
「76回箱根駅伝が終わって早いもので、もう1ヶ月半以上もたってしまった。」

馬八
「来年の箱根まであと10ヶ月余りだ。各チームとも新体制になって、気分を新たに練習に入っているだろうね。」


「オレ達の箱根総括は、今年も1ヵ月以上遅れてしまったが、オレ達流でじっくりとやろう。今回は新企画で『箱根駅伝・野次馬大賞』の表彰を最後にやることにしたしね。」


「76回箱根駅伝は、ミレニアム・20世紀最後の箱根駅伝ということで、各チームとも記念として、優勝の栄冠を狙ったのだろうが、駒沢が念願の初優勝を飾った。」


「オレ達は駒沢・順天の2強の争いと見たが、そのとおり2強が9区まで競って、目を離せなかった。」


「結果的には、去年のような番狂わせでもなく、順当なところだったね。」


「オレ達は、『駒沢は1年生が活躍すれば、優勝が見えてくる』と予想したが、予想通り1年生が往路で大活躍して優勝に貢献した。」


「駒沢は往路に1年生3人も置いたが、1区島村区間3位・3区布施区間6位・5区松下区間4位と、期待どおり、いや期待以上の活躍したのが大きいね。」


「6区大西・7区揖斐・9区西田と4本柱のうち3人までも復路に回し、復路を徹底重視したのも功を奏した。」


「大西は区間2位、揖斐と西田は区間賞と、計算どおりの走りだった。」


「駒沢は往路で2分差を覚悟していたようだが、1位で芦ノ湖にゴールし、4区前田が区間8位、8区平川が若干バテて区間7位だったが大きなブレーキも無く順調だった。去年の順天ほどではないが、準パーフェクトと言って良いんじゃないかな。」


「今年の順天もバランスの取れた布陣だったが、去年のようなパーフェクトな走りにはならなかったね。」


「4区野口でトップに飛び出したところまでは計算どおりだったろうし、現に去年の4区までの通算タイムが4:20:14だったの対し、今年も4:20:09とほぼ同タイムだった。だが、5区佐藤がブレーキ気味の区間12位、6区宮井が大西を捉え切れず、7区揖斐の快走の前に政綱が大きく差をつけられ、8区奥田が追い上げて去年の逆転劇の再現かと思わせたが、9区駒沢西田の区間新に対し、順天入船は再び差を広げられ、万事休すだった。10区、駒沢高橋が区間賞を取り、宮崎も去年のようにはいかず、駒沢高橋に2分近くも差を広げられ、最終的には4分18秒の差になった。
区間順位で順天が駒沢を上回ったのは、実質4区と8区だけだった。」


「予想外のドラマティックな展開は、むしろ、神大・山梨のシード権争いの方だった。」


「うん、4強のうち神大・山梨が信じられないほどの大苦戦となった。
オレ達が6強として挙げた中央・帝京が一時トップ争いに加わり、最終的には3位・4位に入った。
オレ達のトーク(その9)では当初の『6強の予想』を下ろして、『3強・4強』にしてしまったが、結果論だが、『6強』を貫くべきだったかもね。」


「中央が3位と、3年連続4位から脱却したが、これは予想外の活躍だった。」


「『10000m28分台が68回以来ゼロになってしまった』と、オレ達のトークの(その9)で言ったが、28分台がいなくなった途端に念願の3位確保という皮肉な結果になった。」


「西脇・報徳・大牟田等と高校駅伝の有力選手を多く抱えながら、今までは必ずしも期待どおりの活躍が見られず、ある人が中大HPの掲示板に『高校時代の額面割れをしない走りを』と書いていたが、今回は違った。」


「5区・山登りと6区下りの両方で中央が区間賞を取るとは誰も考えて無かったと思うよ。山を制したのが3位入賞の最大の要因だが、8区まで順天と2位争いをしたのは見事だった。」


「帝京は4区で一時先頭に立つなど、往路で旋風を巻き起こし、総合4位に食い込み、2年連続15位から大きく飛躍した。」


「1区から3区までにベスト3を並べて勢いに乗る作戦は見事に成功したが、やはり復路はいまいちで、復路通算は7位だった。本格的な優勝争いに加わるのはこれからだろうね。」


「日大が山本佑樹抜きで5位、早稲田も6位と大健闘だった。」


「オレ達が両校をシード権争い組に入れたのは、明かに見込み違いだった。オレ達がシード権確実と見た東海大を上回ったしね。脱帽だね。」


「日大は、区間順位で見ると、往路が13位・7位・12位・5位・3位、復路が6位・6位・12位・9位・6位と結構出来不出来があるが、登りの渡辺が3位、下りの中山が6位に入るなど、ポイントの区間で、しっかり上位に食い込んだのが良かったようだ。」


「早稲田も同様に、往路が10位・4位・14位・2位・11位、復路が11位・5位・10位・3位・8位だったが、2区・4区・9区のポイント区で貯金を作っているね。」


「東海は、5区の柴田が、一気に追い上げて一時トップに立ち、目立ったが、実はその前の3区で区間2位、4区でも区間3位と上位に入っていたのが、大きいね。」


「復路の東海は、5人中4人が二桁順位で、復路通算10位だったが、往路2位の貯金を守りきって総合7位を確保した。」


「神大・山梨は去年に続き、またまた揃ってブレーキで自滅してしまった。仲良くシード権をキワどく争う結果になったが、ホントに縁が深い。」


「腐れ縁かな?
神大のブレーキの原因はインフルエンザで分かりやすいが、山梨のブレーキは1区大浜にしても、5区尾崎にしてもその原因がわかりにくかった。単なる調整の失敗と片付けるには、ちょっと深刻すぎる結果じゃないかな?」


【1区】


「区間別に見て行こう。まず1区から。」


「徳本がスタート直後から飛び出し、そのまま1分05秒の大差をつけ、法政として22年ぶりの区間賞を取ってしまった。」


「法政が飛び出しても、4強・6強にしてみれば、痛くも痒くも無いということだったのかも知れないが、神大・中央・帝京あたりの、あわよくば優勝を狙うチームはどうかと思うけどね。」


「そう、特に神大相馬や中央板山はもっと果敢に付いて行くべきだったんじゃないかな。1区・2区で良い流れを作るためにもね。
留学生の外人が飛び出したのならリスクが大きいと言えるが、そうじゃなくて日本人だからね。NTVの『もう一つの箱根駅伝』で、八ツ山橋で大八木コーチが、『28分台が引っ張らなきゃー』と大後監督に水を向けていたが、そのとおりで、相馬は徳本と並ぶ28分台のメンツにかけても、付いて行って欲しかったね。」


「順天岩水と駒沢島村が同タイムで2・3位と、優勝を狙うには、非常に良い位置で襷を渡しているのはさすがだね。」


「それにしても山梨大浜のブレーキは意外だった。出雲・全日本と両方で区間賞を取っていて、名古屋ハーフでも学内3位と絶対の信頼性があったはずなんだが。それだけに後の選手に響いたのかも知れないね。」

【2区】


「法政坪田が快調に飛ばし、初の区間賞を取った。神屋・高橋の争いも見ごたえがあったね。神屋が高橋に離されそうになりながらも、持ちこたえたのが、後になって生きてきたんじゃないかな。1区・2区と続けて2位同タイムというのも珍しい記録だ。」


「早稲田佐藤が6人抜きで4位に上がり、さすがにガッツのあるところを見せてくれた。
古田が猛烈に追い上げて、一旦は7人まで抜いたが、オーバーペースだったのか後半失速してしまい、区間5位、通算でも14位から10位へと4つ上げただけだった。
11月の名古屋ハーフでの1:01:57という学生歴代2位(1位は山梨井幡1:00:55)の実績から見て、最後の箱根は、かなりやるんじゃないかと見てたんだがな。ちょっと残念な結果だ。」


「神大辻原は1:10:35の9位とやはり不満足な結果だったし、帝京中崎も1:10:07・区間6位だったが、もっとタイム的に坪田と競っても良かったんじゃないかな?」


「日大は山本佑樹が欠場し、代わりに走った巽が区間7位1:10:20とまずまずの走りだった。」

【3区】


「法政佐藤が逃げ、それを駒沢・順天・帝京が追いかける展開となった。オレ達は、法政は3区でつかまると思っていたんだが、予想に反して佐藤が逃げ切って1位を守り4区へ襷を渡した。」


「法政は4区以降順位を下げてしまったが、3区まで1位をキープしながらシード権を取れなかった例は、67回の明治が2区進藤・3区北沢が2人とも区間2位で通算1位を保ちながら、復路が全く振るわず15位で結局総合14位に終わったケースがあり、それ以来だ。」


「帝京北島の追い上げが凄かったね。」


「帝京に初の区間賞をもたらしたが、去年7区で区間最下位だった選手とはとても信じられない凄い走りだった。1年間でこんなにも豹変出来るんだね。」


「駒沢は1年生布施を起用、区間6位だが、通算2位をしっかり確保した。
順天坂井は、2年生組の一人だがやや力不足で、区間8位、通算4位で駒沢とは35秒の差がついてしまったね。」


「山梨宮原は区間3位とまずまずで、4人を抜いて、通算6位に上がり、追い上げ態勢に入ったかに見えたんだが…。
神大原田は区間7位で通算順位を2つ落として8位になったが、持ちタイムから見て、もっと上を走れたはずで、調整がうまく行かなかったのかな?横須賀シーサイドでは良かったのにね。まあ、来年に期待しよう。
早稲田は4位から9位へと順位を下げたが、東海伊藤が区間2位と持ちタイム以上の良い走りをし、11位から5位まで上がっている。」

【4区】


「帝京鎌浦が法政奈良沢を抜いて、一時トップに立ったが、オレ達の予想どおり後から順天野口がぐんぐん追ってきて法政・駒沢・帝京を抜き、順天が今回初めてトップに躍り出た。
 駒沢前田は区間8位と必ずしも良い出来ではなかったが、通算3位を維持、キャプテンとしてしっかりつないだんじゃないかな。」


「山梨カリウキの追い上げが注目されていて、前半はかなり飛ばし、二宮までのタイムでは順天野口を14秒も上回っていたが、10.8km地点で飛び跳ねるような異常なシーンが見られ、左アキレス腱かふくらはぎを痛めたようで、その後通算5位から9位へと順位を下げ、結局区間順位も8位と2度目の駅伝でも真価を発揮できなかった。NHKの解説の金さんは前半のオーバーペースも故障の引き金になったんじゃないかと言っていたね。」


「神大野々口は、今シーズン思うように調子が上がらないまま箱根に入ったが、それでも区間3位と堅実な走りで、トップ順天と2分36秒差と、まだまだ優勝への射程距離内で、5区林へ襷を渡した。」


「東海大西村も野々口と同タイムの区間3位と好走し、5区柴田が一時トップに並ぶお膳立てをしている。
早稲田原田が区間2位と健闘した。エース佐藤と同じ猛練習をこなして来たらしいが、その成果を十分に発揮したね。」

【5区】


「小田原では順天がトップでリレーしたが、5区佐藤はペースが上がらず、9.7kmで駒沢松下に、10.4kmで帝京飛松に、つかまってしまった。さらに東海柴田・中央藤原にも抜かれて、通算5位でゴール、区間は12位と、去年の区間3位の好走再現はならなかった。」


「佐藤について、オレ達はトーク(その9)で『ベテラン佐藤が前回同様の走りを見せるかどうかがポイントの一つ』としか言わなかったが、実は秋の鴻巣ナイターの佐藤を見て、去年のような走りが出来るか若干疑問視していたんだ。」


「6位で襷を受けた東海柴田は故障上がりにもかかわらず、登りでバンバン飛ばし、11.5km小涌園手前で順天を捉え、14.4kmではついに駒沢松下と並び、さらに一時トップに立ち40mまで差をつけたのだが、苦手の下りで松下に再逆転されてしまった。」


「でも、柴田の山登りでの2年連続区間賞というのは凄い。
50回以降、5区の2年連続区間賞は、50・51・52・53回4回連続の大東大大久保初男、55・56回の順天上田誠仁、57・58回の日体大岡俊博、61・62回の早大木下(金)哲彦、63・64回の日体大平山征志と結構いるが、柴田も名実ともに山登りのスペシャリストになったと言えるね。」


「駒沢松下は、スパートすると見せかけて柴田の反応をうかがうなど、1年生とは思えない心憎いばかりのレース運びで、17.3kmで柴田を突き放し、芦ノ湖のゴールテープを切った。」


「中央藤原は、オレ達も2区を走ると予想していたし、その予定だったのが、5区の富田が走れなくなり、3日前に急遽5区に変更になったようだが、柴田と同タイムの区間賞を取った。これも凄い。全日本でアンカーをつとめただけの実力を発揮し、1年生ながら一躍中央のエース格にのし上がって来たね。」


「7位で野々口から襷を受けた神大林健太郎(ハヤケン)は、スタート直後、6位東海柴田に並びかけて、これは良いぞと思わせたんだが…。
小涌園では、後にいたはずの早稲田・日大に抜かれて、苦しそうな走りで、これはヤバイと思った。しかしまさか、芦ノ湖に13番目で入ってくるとは思わなかった。肉離れか何かアクシデントが起きたんだろうなと想像していたが、インフルエンザだったんだ。高熱で2日の晩は入院したそうで、3日の夜の神大の讃える会には同室の三村ともども出席できなかった。」


「ハヤケンは、広島熊野高出身だが、神大で熊野高の先輩小田典彦が68回で2区区間最下位だったのが、翌年の69回に、5区で区間賞(神大初の区間賞)を獲得している。先輩にならって、来年はこの悔しさを晴らして欲しいね。実力は十分だから期待して良いと思うよ。」


「山梨の尾崎の区間13位も全く意外だった。去年の関東インカレハーフ1位の選手だからね。オレ達のトーク(その8)で『有力メンバーが意外に走れなかったりする例もある』と言ったが、山梨の尾崎・大浜がその典型になってしまった。これも調整の失敗なのか、残念だな。」


「往路優勝の駒沢のタイムは歴代7番目で、そんなに凄くは無いんだが、タイム差から見て、今回の往路の高速レースの激しさは、箱根史上稀に見るものだ。
トップ駒沢から13位神大まで8分42秒差というのは、前代未聞のタイム差だ。過去25年間で13位までの最短のタイム差は、68回の12分28秒差だった。
また7位まで3分以内というのも例が無い。同じく68回の5分05秒差が今までの7位までのトップとの最短タイム差だった。」


「10分以上差のいわゆる一斉スタート2校というのも初めてだね」


「そう、一斉繰上スタートが始まった60回以来初めてだ。
今まで一番少ないのが68回と72回の4チームずつで、6チーム・7チームが当たり前だった。
今回の往路がいかに目まぐるしく順位が変わり、熾烈な高速レースだったかを物語っているね。」


「往路が終わって、駒沢がトップに立ち、初優勝へ一歩近づいたが、森本監督や大八木コーチは、去年と違って非常に慎重な発言だった。」


「去年は、本人達も勿論のこと、誰もが往路が終わった時点で、駒沢の初優勝絶対間違い無しと思ったが、9区で順天に大ドンデン返しを食らった。今回の順天との差は、前回とほぼ同じ1分59秒差で、順天の復路メンバーから見て、駒沢が絶対とは、まだ言い切れなかったね。」

【山梨・神大シード権危うし?!】


「山梨・神大が予想外の大ブレーキで、12位・13位とシード権すら危なくなって、これは大変なことになると思ったね。」


「そう、オレ達は、神大がホントにシード権取れそうなのか、往路が終わってすぐ、過去に往路13位以下でシード権を取った例があるかどうか、調べてみた。
そうしたら、51回以降では、12位以下だと7校がシード権を取っていて、山梨は何とか大丈夫だろうと思ったが、13位以下では2校だけだった。
一つは69回の順天で、2区であの本川一美が疲労骨折による大ブレーキを起し、芦ノ湖に着いたときは13位、トップと17分の差、9位とも5分半の差がついていた。それを復路に通算で12・13・13・12位と来て、アンカー安永の区間賞で9位に入り、辛うじてシード権を確保した。
もう一つ55回の東農大が5区の大ブレーキで14位で芦ノ湖に入り、トップと18分の差、9位とも4分近くの差がついていたが、復路は通算12・8・8・7位と上げていって最終も7位でシード権を取った例がある。この2つだけだった。
だから、神大のシード権はかなり厳しそうで、実際どうなるかわからないと、半分諦めの気持ちもあったね。」


「うん、だが、オレ達神大サポーターとしては、何としてもシード権を取ってもらわないと困るんで、早速タイム差から、上位のどのチームまでを食ってひっくり返せばシード権を取れるのか、試算してみたんだね。」


「そう、1位駒沢との8分42秒差から、2位東海8分14秒、3位帝京7分30秒、4位中央6分59秒、5位順天6分43秒と、5位までで6分以上差があり、これを追い越すのはまず絶望的だ。
となると、6位法政5分57秒差、7位日大5分46秒、8位早稲田4分26秒、9位大東3分09秒、10位日体大2分37秒、11位拓大2分23秒、12位山梨1分59秒差、この7校が逆転の標的かなと思った。」

【6区】


「復路は正月の箱根には珍しく濃霧の中のスタートになった。
5位の順天宮井が前半飛ばし、帝京・東海を追い抜き3位に上がり、トップの駒沢大西に迫るかと思われたが、後半大西が逃げ、区間2位で、区間3位の宮井に逆に10秒差を広げた。」


「中央永井の区間賞の素晴らしい走りが目立った。永井は去年が7区で区間7位と平凡だったし、今シーズンも出雲が区間10位、全日本は補欠にも上がってなく、府中ハーフでは学内3位だったが、実質ノーマークだった。
区間タイムは58分35秒と、去年の神大中澤の58分06秒には及ばないが、コース変更で新区間記録になった。」


「山梨は去年の経験者黒岩が1:00:10・区間5位とまずまずの走りで通算順位を12位から11位へと、一つ上げた。」


「これに対して、神大野間は、足に豆が出来て、血を噴いてしまったようで、区間12位と振るわず、通算は13位のまま。
神大がシード権を得るための逆転ターゲットの8位法政とは37秒・12位日体大とは13秒縮めたが、6位日大とは2分、7位大東と2分半、9位早稲田とは2秒、10位拓大とは2分と、縮まるどころか逆に広がってしまった。これは、いよいよもって予選会落ちを覚悟しなければならないかと思ったね。」

【7区】


「1位駒沢揖斐が快調に飛ばし、2位中央・3位順天政綱との差をじわじわ広げて行き、平塚中継所では順天と4分19秒差になった。」


「揖斐について、監督コーチは、体調が十分でなくやや心配していたようだが、見事な区間賞の快走だった。
順天政綱がどんどん離されてしまって、オレ達はここが順天のウィークポイントになりそうと予想していたから、やはり足を引っ張る結果になったかと思ったが、実は政綱は1:05:23、区間3位とタイムは去年を22秒上回っている。いかに揖斐が良かったかと言うことだ。」


「中央野村は揖斐に離されたものの、力強い走りで、区間2位に入り、通算でも2位を確保した。
帝京吉富は区間7位だが4位をキープ。日大清水智也は区間6位で東海を抜いて通算5位に上がった。東海は6位へダウン。大東はまだこの時点では通算7位を維持。
早稲田櫻井は、区間5位と好走して法政を抜いて8位に上がり、往路の原田と並び早実勢の活躍が目立った。法政は6区の区間15位に続き、7区も区間14位と振るわず、通算9位とシード権ぎりぎりに落ちてきた。」


「山梨は清田が区間11位だったが、通算順位を一つ上げて10位に。シード権がようやく見えてきた。
神大金原は区間4位の好走で日体大を交わして12位に上がるが、まだ3校が前に控えている。
ただ、11位拓大との差は1分51秒、10位山梨と2分22秒差、9位法政とは2分27秒差、8位早稲田と4分25秒差、7位大東と5分5秒差と、着実に差を詰めてきている。」

【8区】


「駒沢平川が逃げ、中央花田と順天奥田が追う展開だった。気温がだいぶ上がってきたせいか、後半平川のペースがガクッと落ちて、奥田が一気に3分も縮めて1分20秒差まで迫り、ひょっとすると去年と同様9区で大逆転が見られるのかと思わせたね。
帝京市川は区間4位で通算4位をキープ、日大新垣は区間12位だが、通算5位をキープ、東海松崎も区間13位だが通算6位はキープと、4・5・6位に変動はなかった。」


「シード権争いの方は、大東が区間14位とブレーキになって8位に落ち、代わって早稲田が7位に上がった。山梨は安藤が区間8位で法政を抜いてようやく9位に上がる。法政は区間11位で通算ではついに10位に下がり、いよいよシード権が危うくなってきた。
神大中村は、前半順天奥田に次ぐ区間2位の快調なペースで走り、後半追い上げた中央花田に次ぐ区間3位で、拓殖を抜き11位へ。8位大東と2分11秒差、9位山梨と1分13秒、10位法政と25秒差まで迫り、徐々にシード権が近づいてきているがまだわからない。」

【9区】


「順天入船は前半飛ばして追い上げ、権太坂上で駒沢西田とは1分6秒差と、14秒縮めたが、これが限界。駒沢西田の区間新の快調な走りに、後半差は広がるばかりで、15kmの横浜駅では1分30秒、オレ達が見ていた17.8kmの子安入江橋では2分近い差になっていて、去年の順天高橋・駒沢北田の大逆転劇の再現はならなかった。」


「以前も話したが、過去25年のデータでは優勝への逆転はほとんどが9区までだ。10区に入って逆転したのは62回、順天が鶴見中継所で早稲田と2分6秒差あったのをひっくり返して優勝しているが、その1回だけだ。だから、鶴見で2分31秒差になった時点で順天の2連覇の可能性は薄くなり、駒沢の優勝が濃厚になったと言って良いね。」


「シード権争いは、11位で襷を受けた神大小松が6.15km地点で10位の法政土井に追いつき、すぐ抜くかと思ったら、土井がぴったりついて離されず、15kmの横浜駅までずっと並走が続いた。」


「小松は8位大東との差が、権太坂上で1分27秒だったのを、横浜駅では52秒と縮め、9位山梨との差も同様に権太坂上で55秒差を、横浜駅前で21秒にまで縮めてきて、ようやくシード権が目の前にハッキリ見えてきた。」


「ところが、横浜駅を過ぎてから、小松は土井にまた離されはじめ、オレ達が応援していた17.8km(残り5.2km)の子安入江橋では13秒も離されていた。大東とは34秒、山梨とは18秒差と、もうすぐ手が届く距離になっていたから、オレ達は、『小松―ッ!まだこれからだー!行けーッ!』と檄を飛ばした。」


「小松は、残り4km切った生麦あたりでは法政・大東・山梨の3人の8位集団から23秒・約120〜130m以上離されてしまったようで、このままではシード権がまた遠のいて行く!と思ったね。」


「神大のアンカー吉野は、20〜30秒差なら、法政・大東を交わす力は十分あるとは思ったが、ずるずる開いて1分以上になったらヤバイんじゃないかなと、ホントにハラハラした。」


「しかし、この後小松は物凄い粘りを見せ、再び息を吹き返し、残り1kmでまた法政・山梨・大東の3人の8位集団に追いつき、山梨・法政を追い抜き、大東と1秒差の9位で鶴見中継所へ入った。」


「小松も今シーズンは満足な状態ではなかったようで、全日本1区ではブレーキになるし、横須賀シーサイドでは、学内17位だったしで、下手したら箱根の14人から漏れるのでは?と心配したが、最後の最後にホントに見事な粘りの走りを見せてくれた。」


「山梨尾池が区間12位とブレーキになったが、これも意外だった。2年前、古田欠場の代役で1年生ながら急遽2区の大役を任され区間12位に泣き、今回も西川の風邪の余波で下見もしてない9区を任されるという不運が重なっているが、ちょっと気の毒すぎるね。」


「東洋石川のフラフラゴールが大きく取り上げられたが、横浜駅前まで西田・入船に次ぐ区間3位にいたことからみても、明かにオーバーペースだな。オレ達がいた子安入江橋が17.8Km地点だが、そこで既に蛇行を始めていて、これは大丈夫かなと心配になった。襷がつながっただけでも良かった。」


「この他、9区では早稲田平下が区間3位と健闘し、チームの6位確保に貢献している。」

【10区】


「駒沢高橋正仁は駅伝初登場ながら、快調な走りを見せ、蒲田で順天宮崎との差が縮まってないと聞いたときに、もう駒沢の優勝は完全に決まったと感じたね。
その後も宮崎のペースが上がらないのに、高橋は相変わらず、良いペースで走り、その差は徐々に広がって行った。宮崎も練習不足なのか、去年のような完璧な走りを再現できず、去年のタイムより1分05秒悪かった。
3位中央・4位帝京・5位日大・6位早稲田・7位東海までは、9区から全く変わらなかった。」


「鶴見を出てすぐ大東をかわして8位に上がった神大吉野が、5.3kmの蒲田では山梨・法政・大東の9位グループに30秒差をつけ、完全に突き放し、シード権を掌中に収めた。
8位を争う3チームから30秒差の11位で襷を受けた山梨は、椎葉が猛烈に追い上げ、蒲田で大東・法政に追いつき、八ツ山橋では法政に52秒の差をつけ、9位をほぼ確実にした。しかし馬場先門あたりから失速し、ゴールでは10位法政久村に29秒差まで迫られていて、もうちょっと距離があれば法政に抜き返されていたかもしれない、ひやひやのシード権だった。」


「神大らしい走りを、最後の最後に吉野が見せてくれたという感じだ。区間2位ながら、去年の宮崎の記録を破る区間新だったし、7位東海まであと18秒と迫り、あとちょっとで抜いて、7位に上がれるところだった。」


「10区吉野が快走出来たのも、小松が粘って8位集団に追いついたからとも言えるんじゃないかな。もし1分近いハンディを背負って吉野がスタートしたら、あれほど快調に走れたかどうかわからないと思うな。現に山梨椎葉は30秒差を挽回するために、最初から飛ばし過ぎて、後半バテて、法政に差を詰められている。」


「吉野がゴールした時、神大チームが『シュウゴ』『シュウゴ』と笑顔で迎えていたのが印象的だった。」


「順天野口がボロボロ悔し涙を流しているのと比べて非常に対照的で、賛否両論があるだろうが、あれが神大のチームカラーなんだろうな。でもさすがに、3日の夜の神大体育館での讃える会で、壇上に並んだ14人の選手のうち、ニッコリと笑顔を見せたのは吉野だけで、他の13人は浮かない神妙な面持ちだった。」

【復路の駒沢は強かった】


「復路を終わって、あらためて感じるのは、駒沢はホントに強かったということだね。」


「うん。今回の駒沢は名実共に箱根駅伝史上最強のチームと言って良いね。
総合(通算)記録も、5・6区のコース変更で自動的に大会新になったが、11:03:17は実質的にも大会新だ。
というのは、過去の最短記録は70回(平成6年)の山梨の10:59:13だったが、今回の駒沢のタイムを前のルートの214.7kmに換算すると、10:58:09になり、1分以上短縮している。
往路の駒沢のタイムは、さっきも言ったとおり歴代6番目で、そんなに凄くはないのだから、復路の駒沢がいかに強かったかと言うことだ。」


「順天も、復路のメンバーは9区が去年の高橋から入船に変っただけで、4人は全く同じメンバーだったが、奥田が去年より2分45秒良いタイムだったのが効いて、去年の復路のタイム5:33:34より1分半縮めて5:31:56だった。しかし駒沢が復路5:29:37と、順天を2分19秒も上回っている。」


「復路の大会記録は73回の駒沢の5:27:08が実質最高だが、今回の駒沢の復路5:29:37をかつての距離に換算すると5:24:29となり2分半以上も短縮していることになる。」


「3位以下に中央・帝京・日大・早稲田・東海と入ったが…。」


「帝京以下の4チームに脱帽した上でだが、神大サポーターとして、負け惜しみの『レバ・タラ』を言わせてもらえば、もし5区のブレーキが無く、ハヤケンが1分13秒台で走っていたとすれば、6分ぐらいは短縮できたはずで、東海・日大は勿論、2分6秒差の早稲田と5分30秒差の帝京にも勝って、4位に入っていたかも知れないね。」


「帝京の喜多監督も、『6〜8位を狙っていた。4位はラッキー、出来すぎ。』と言ってたようだが、神大・山梨のブレーキに助けられた4位と言えなくも無い。」


「ただ、神大は『レバ・タラ』でも、10分20秒差の3位中央には、勝てなかったということだね。
だからどっちみち、神大は目標の3位以内に入れず、全日本大学駅伝の選考会に回るのは必至だったということになる。」


「ちなみに、全日本の関東地区のシード権は、全日本の1位〜3位の駒沢・山梨・順天と、箱根1位〜3位の駒沢・順天・中央で、結局駒沢・山梨・順天・中央の4校ということになった。残り7校の椅子を6月10日(土)の関東地区選考会で争う訳だ。」


「山梨は、去年の出雲・全日本でいずれも2位に入り、今シーズンの安定性は相当なものだと思われたのに、肝心の箱根で悲惨な結果になってしまった。」


「神大も山梨も、11月23日のロードでは皆非常に良いタイムを出しているのに、肝心の箱根の本番ではここ2年実力を出し切ってない。というより逆にブレーキだったり、調子を下げたりしている。
これは、両校とも選手層が厚くて、学内の競争が激しく、箱根に出るために、どうしても、11月にピークをもってこないといけない、という事情も影響しているのかな?」


「順天は11月のロードにほとんど出てないが、駒沢は府中ハーフに出ていて、神大・山梨と同じだと思うけどね。調整力の差かな?
まあ、箱根はホントに何が起きるかわからない。ちょっとした調整ミスで地獄を見ることになる訳だ。」

【来年の展望】


「今年はミレニアムだったが、来年の77回こそが21世紀最初の箱根駅伝になるわけで、各チームとも記念すべき年として、是が非でも優勝したいだろうね。」


「残るメンバーを見ても、駒沢と順天がやはり2強として、優勝争いの中心になるのは間違い無いね。そこに中央が加わって新3強になるのか、帝京が本格的に優勝争いに加わってくるのか、神大・山梨が今年のリベンジを果たすべく『YKK』を復活させるのか、また日大・早稲田が今年以上に力をつけて優勝争いにからんでくるのか、楽しみだ。」


「オレ達が応援する神大は、シード権確保に貢献した4年生が辻原・野々口・野間・中村・小松・吉野と6人も卒業してしまうが…。」


「うん。でも箱根経験者が、勝間・林・飯島・相馬・金原・原田と6人残るし、この他にも有力ランナーがずらっと揃っていて、横須賀シーサイドのタイムに見られるように、層の厚さは駒沢・順天にひけを取らないと思う。
故障せず、吉野のような堅い走りを10人全員が出来れば、駒沢・順天に十分伍して戦えるはずだ。それは決して不可能ではないと思うけどね。」


「3日の夜の讃える会で植田部長が『前途は厳しいが、今回の厳しい経験を糧として、さらに這い上がる楽しみもある。(69回に)8番で初めてシード権を取って、トントンと優勝まで行った。今回の8番を、たかが8番と受けとめ、もう一度頂上まで上り詰めたい。』と言っていた。」


「大後監督も『これでは終われない。必ず巻き返しを図りたい。』と語り、勝間新主将も『初心に帰って必ず優勝します。』と決意を明らかにしていた。勝負強い神大が蘇って来ることを期待しよう。」

【予選会落ち】


「箱根予選会に回ることになった6チームについて、少し見ておこう。
まず10位法政だが、復路12位と不振で、折角の往路6位の貯金を吐き出してしまい、29秒差で惜しくも及ばなかった。もう一息で山梨を食ってシード権を取れるところだったのに、悔しかったろうね。来年はエース坪田が抜けるが、徳本・土井を中心にまたオレンジ旋風を巻き起こして欲しい。」


「11位の日体大は、エース格の佐藤が1区で5位とまあまあだったが、往路の他区間で10・9・12・9位と通算10位、復路も8区で1年生栗原が5位だったが、他が13・13・10・12位で二桁が続き、復路通算10位と、予選会の時のような堅実さが見られなかった。」


「12位大東は、山登りの小林が区間5位で往路9位につけ、復路も6区下りのスペシャリストの金子が区間4位で通算7位に上がり、7区も区間8位で通算7位を維持した。そこまでは悪くなかったが、8区以降、区間14・13・15位と極端に不振が続き、5年ぶりにシード権を失ってしまった。」


「13位関東学院は、期待の1・2年生が2区・3区で区間15位と出遅れたのが響き、5区以降区間8・10・9・9・6・5位と追い上げたが、シード権には遠く及ばなかった。」


「14位拓殖は、3区で区間5位、6区で区間6位に入ったが、後は11・11・10・10・12・15・11・14位と全て二桁で、全く良いところが無かった。」


「一時はダークホースとまで言われたチームだけに、低迷振りが目を引くが、しっかり立て直してほしいね。」


「東洋がダントツの最下位になってしまったのも、全く予想外だったね。」


「10000mの持ちタイムでは9番目と、シード権争いに入っても良いチームだ。NHKの解説をしていた大志田さんも『東洋は7・8・9位あたりを争うチーム』と見ていた。往路での不振が、復路にもかなり影響して、石川のオーバーペース・蛇行に見られるように、無理が重なって、実力を出し切れないまま終わってしまった。」


「まあ、予選会に神大や山梨が落ちてこなくて、ホッとしているチームもあるんだろうが…。」


「うん。両チームが落ちてくると、73回予選会のように6校の枠が実質4校になってしまうからね。
また、全体のペースが上がりすぎて、レースの組立てがおかしくなっちゃうだろうしね。
いずれにせよ、予選会も高速化の流れは変らないだろうから、各チームとも大変だろうが、頑張って欲しいね。」

【箱根駅伝・野次馬大賞発表!】


「今回から、オレ達の独断で、箱根で目覚しい、あるいはユニークな活躍をした選手を表彰することにしよう。」


「うん。豪華な賞品を進呈しようと思ったが、スポンサーがいないから、賞品は無しで、HP上の名誉の表彰だけだが。」


「まず、最初にMVP最高殊勲選手を決めてしまおう。」


「当然優勝した駒沢の選手から選ばれるが、2区の神屋・5区の松下・6区大西・7区揖斐・9区西田・10区高橋の6人が、それぞれ役割をしっかり果たして、いずれもMVP候補だね。敢えて一番貢献度が大きいと見るのは、9区西田かな。8区で順天に迫られて、ひょっとするとまた大逆転かと思わせたのを、後半差をつけて突き放し、優勝を確実にした走りは見事だった。MVPは西田に決定。」


「次に新人王。
今回の箱根では、1年生が26人走っているね。このうち、新人王候補にノミネートされるのは、区間3位以内だと、1区で3位の駒沢島村と5区区間賞の中央藤原、それに7区2位の中央野村の3人だけになってしまう。」


「去年の1年生で3位以内は、区間賞の柴田・相馬、2位の神屋・富田、3位の金子・入船・奥田と7人もいたのに比較すると、ちょっとさびしいね。
今回の最優秀新人選手は、柴田と同タイムながら、区間賞を取った中央藤原しかいないね。」


「次に、最多追い抜き賞。」


「これは、何人抜きを演じたかだが、2区の早稲田の佐藤敦史と3区の東海大伊藤孝志が、それぞれ6人抜きをやっており、この二人に決定!。」


「3つ目に『ぶっちぎり賞』。区間タイムで2位に最も大きな差をつけ、ぶっちぎりの区間賞をとった選手だね。」


「1区法政徳本の飛び出しのイメージが鮮烈だが、実は、8区順天奥田が1分50秒差、7区駒沢揖斐が1分34秒、9区駒沢西田が1分11秒、1区法政徳本が1分05秒で、順天奥田に決定。」


「飛躍賞。去年に比べて各段にタイムや順位を伸ばした選手に上げる賞だね。」


「帝京の各選手が、去年は区間11〜15位だったのが、今年は皆上位に上がってきた。中でも凄かったのが、3区の帝京北島で、去年の15位から一躍区間賞に輝いており、彼に決定。」


「次の賞は、アグレッシブ賞。いかに積極果敢なレースを見せたかだね。」


「区間賞を取った選手・上位に入った選手は皆、前半から飛ばして、積極的な走りを見せているし、古田や、石川のように後半失速した選手も、アグレッシブだったのだが、ここは、往路の高速レースを演出した法政の1区徳本と2区坪田じゃないかな。この二人にアグレッシブ賞を進呈しよう。」


「最優秀粘り賞。京都の高校駅伝で仙台育英が驚異的な粘りの駅伝を見せてくれて、箱根では、どういう粘りの走りが見られるか楽しみだった。」


「9区で一旦追いつきながら離され、また追いついて最後に抜いた神大小松と、10区で52秒差から29秒差まで迫った法政久村が、それぞれ凄い粘りを見せてくれたが、やはりシード権確保に大きく貢献した神大小松が最優秀粘り賞だね。」


「カムバック賞。これは、プロ野球のカムバック賞と同じで、故障などで一旦姿を見せなくなったりしたが、また復活して活躍した選手ということだね。」


「1年で区間賞を取ってから、箱根は勿論あらゆる大会に出なくなってしまっていた山梨の松下康二が14人のエントリーメンバーに入って来て、かつてのファンに「おーっ」と思わせた。10人の中に入って走れば、当然松下がカムバック賞だったが、残念ながら走らなかった。
去年区間15位と不振だった山梨古田が、インカレ等に出ず心配されたが、出雲から復活して来て、今回の箱根では一時は7人抜きまでやって区間5位に入っている。彼がカムバック賞だ。」


「最優秀雑草選手賞。これは無名高校の無名選手が頭角を現してきたときの賞だ。」


「8区と9区でそれぞれ区間3位に入った、神大8区中村裕と9区早稲田の平下修、この二人が雑草選手賞だね。中村は、短歌の俵万智で有名な横浜の橋本高校、平下は高知学芸出身で、二人とも高校駅伝は、全国大会はおろか、県の予選にすら出ていない全くの無名選手だった。」


「次に技能賞、これは、うまい走りというか、頭脳的な走りを見せた選手を表彰するものだ。」


「駒沢の5区山登りの松下が、区間タイムでは柴田に負けたが、柴田と競って、心憎いばかりのレース運びで抜き返し、最後の下りで見事にギアチェンジし、登り・下り両方への適応力を見せた。技能賞は松下に決定。」


「次も大相撲三賞にならっての賞で殊勲賞。横綱を倒し、金星を上げた選手だ。」


「うん、今回の箱根で、凄い大物を食った大金星はないが、6区中央永井が、区間賞候補本命の駒沢大西と順天宮井を破って区間賞に輝いており、彼が殊勲賞だろうな。」


「敢闘賞はどうだろう?」


「大相撲の敢闘賞は横綱大関以外で10勝・11勝上げた選手のようだが、箱根では、よく頑張ったなという賞かな。」


「となると、結構候補者は多いが……。」


「区間3位以内に入った選手で、従来余り目立たなかった選手や、故障上がりや低迷続きだったのに頑張った選手が表彰対象かな。
4区で区間2位の早稲田原田・区間3位の神大野々口・同タイムの東海西村・5区区間3位の日大渡辺尚幹だろうね。ちょっと多いがこの4人が敢闘賞だ。」


「次はアカデミー賞に助演男優・女優賞があるが、それになぞらえて、脇役賞というのはどう?」


「脇役賞なら東海大の3区伊藤孝志と4区西村哲生に決まり。猛然と追い上げて一時トップに立った5区柴田だけが目立ったが、トップのお膳立てはこの二人の力走があったからだ。」


「代役賞というのがあっても良いね。」


「本来走るべき選手が故障・風邪などで走れなくなり、急遽代役を命じられて頑張った選手だね。
山梨尾池が代役だったが不振だった。5区中央藤原も代役だが、もともと山登り要員だったようだし、新人王にしたから今回は除外。
日大巽が2区で大エース山本佑樹の代わりに走り、エース揃いの中で区間7位に入ったのは立派だった。彼が代役賞だね。」


「スマイル賞というのはどう?」


「優勝した駒沢の涙まじりの笑顔もあったが、ここは、神大アンカー吉野のゴールでの笑顔が最も印象的だったから、彼がスマイル賞だ。彼はいつもニヒルな野武士といった雰囲気で、あんな良い笑顔は初めて見たね。」


「笑顔の次は感動の涙で、感涙賞。」


「選手達の嬉し涙・悔し涙も良いが、中継の画面で涙を誘った選手といえば、やはり9区東洋大石川だね。繰上スタート回避のために賭けに出て飛ばした結果、オーバーペースでフラフラ蛇行して鶴見中継所に入った。抱えられて号泣していた場面では、さすがに胸が一杯になった。」


「最後に、最長テレビ映り賞。NTVの中継で最も長くテレビに映っていた選手。」


「必ずしも正確ではないが、TV画面のタイムを見ながら、映っている時間を測って見た結果、5区駒沢の松下が累計で約24分半映っていて最も長かったようだ。10区の高橋が約20分、2区の古田が19分近く、9区西田が18分半、1区徳本が16分半位、8区平川が約16分だった。従って最長テレビ映り賞は駒沢の松下に決定。」


「さあ、来年はどんな選手が、どんな賞を獲得するか、楽しみだね。」


「今回よりもっと奇想天外な賞が出てきたら面白いね。」

(2000.2.19)