箱根駅伝野次馬トーク(「談義」改め)
(その2・第74回箱根駅伝総評)
 
野次郎
「第74回箱根駅伝が終わって、もう2週間たってしまって、気の抜けたビールみたいだが、おれ達なりの総括をしておこうや。」
馬八
「そうだ、予想を出した者として、一応けじめをつけておきたいしね。」
 
【神大優勝!!】
 
馬八
「やっぱり予想通り本命神大の優勝で終わったね。でもおれ達神大サポーターとしては、一時はほんとにどうなることかと思ったけどね。」
野次郎
「まったくだ。3区から4区にたすきが渡った時点(平塚中継所)で神大は6位、トップ早稲田と4:37差、2位駒沢とは3:17差で、早稲田はともかく、駒沢の復路のメンバーを考えると駒沢の初優勝はほぼ決まりかなと思ったよ。」

馬八
「神大の1区高津は、1週間前から胃の調子がおかしかったんだって?」
野次郎
「そうらしいが、実は風邪の前兆だったようだ。走る前には寝汗をかいたようだし、3日の夜の神大の祝勝会では、優勝旗を持って入場してきたが、終始ゴホンゴホンと苦しそうな咳をしていた。」
馬八
「1区のレースでは後半じりじり後退していって何が起きたのかと心配したが、それじゃまともに走れる訳がないな。怪我でなくて良かった。」

野次郎
「神大の2区小松・3区野々口も、不本意な走りだったと本人たちは言っている。まあ、たしかに2人とも、神大らしい後半の追い上げが出来ず、区間6位で、本来ならもう1分くらいタイムを稼いでも良かったはずだ。でも、小松は3人抜き、野々口も2人抜いて、それなりにじわじわ追い上げた功績はあったな。」

馬八
「神大4区渡邊の追い上げは見事だったな。」
野次郎
「最初から飛ばしたが、後半全く落ちなかった。区間賞とって一気に早稲田・駒沢との差を詰めた。1位早稲田とは2:46差、2位駒沢とは1:13差に縮まった。この渡邊の好走で流れが変わって、これが5区山登り勝間の恐るべき大逆転を生むことになったとも言えるね。」

馬八
「しかし、5区山登りで、1年生勝間があそこまでやるとは誰も想像しなかったな。」
野次郎
「一躍スーパールーキーになったな。おかげで早稲田の1年生佐藤敦之の1区3位もやや陰が薄れてしまった。大後監督が戦前に見せ場を作りたいと言っていたが、大変な大どんでん返しで、物凄い見せ場だった。TVで見ていてほんとに興奮したな。中央尾方を引き離し、早稲田酒井を捉え、駒沢を猛烈に追いあげて行った。駒沢足立を抜く瞬間には、おれは思わずTVの勝間に向かって、行け行けー!抜け抜けー!って大声で応援してしまったよ。」
馬八
「ほんとにドラマティックだった。芦ノ湖ゴールの瞬間の勝間の気迫・形相は凄かったな。」

馬八
「6区中澤の区間新もまったくの予想外だったな。」
野次郎
「おれ達は、駒沢河合・山梨境田に次ぎ、区間3位くらいで入ってくるのかと予想していたが、とんでもない。去年専修の小栗が出したばかりの区間記録を24秒も縮めてしまった。しかも去年は追い風があったが今年は無風状態だった。この中澤の記録は、しばらくは破られないんじゃないか。
山登り・山下りが勝負をかなり左右するとおれ達は予想したが、今回はまさにここで勝負が決まってしまった。神大は登り・下りに超スペシャリストを二人抱えた訳で、来年も他校に大変なハンディをつけることになるね。」

馬八
「7区中野・8区辻原の連続区間賞も見事だった。」
野次郎
「メンバーから見て、二人ともある程度区間賞取れる可能性があるとは思っていたけどね。中野も辻原も神大らしい実に安定した走りを見せつけたな。ただ、気温が上がったせいもあるが、辻原のタイムはいまいちだった。」
馬八
「9区岩原も安定した走りで区間3位と無難にアンカーにつないだが、後半ちょっとばててしまって、区間タイムでは駒沢の佐藤裕之に差をつけられてしまった。来年に期待したいね。」

野次郎
「アンカー中里は、青東駅伝で良い成績を出していたが、実質的には無名の選手といっていい。去年のアンカー今泉と全く同じで4年間頑張って最後の最後に箱根に間に合って、しかも栄光のビクトリーロードを走り、ゴールテープを切るという、最高の舞台に立てた。神大の層の厚さを示す典型的な例だし、また4年間下積みで頑張り続けていれば、最後に報われるんだという見本で、他の選手の励みになるね。
おれ達は人気No.1の高嶋が復調なって、アンカーを走るのかなと思ったていたが、完全には戻ってなく、走らなかった。卒業後は実業団(コニカ)で是非頑張って欲しい。」
 
【駒沢と山梨】
 
野次郎
「山梨の古田が故障で欠場と聞いたときに、こりゃ神大がぐっと有利になったかな、なんて勝手に思ったが、どっこいそう話は簡単じゃない、箱根は何が起こるかわからない。ほんとに走ってみないとわからない。」
馬八
「スポーツの勝敗に「もしも」とか「れば」・「たら」は意味がないといわれるが、もし、古田が出ていたらどうだったかな?」
野次郎
「単純に記録で見ると、神大と山梨は最終的に6:35差ついており、たとえ古田が3分くらい稼いだとしても神大は勝っていたということになる。古田が出ていれば、山梨の2区尾池も別な区間を走っていただろうし、全然別の流れになっていたかも知れないけどね。
また駒沢と山梨の差は最終的に2:30差だったが、2区の区間記録で駒沢の藤田が尾池に3:09勝っており、もし古田が出て藤田と同等かそれ以上で走ったとすれば、山梨は2位に上がって、駒沢は3位だったかもしれないということになる。」

馬八
「いずれにせよ、神大・駒沢・山梨の3強が前評判どおりの力を見せつけたが、神大と残り2強の差はどこにあったのかな?」
野次郎
「まず、神大は区間順位が往路で高津11位・小松6位・野々口6位・渡邊1位・勝間2位、復路が中澤1位・中野1位・辻原1位・岩原3位・中里2位と往路の3区までは別として、その後がまさに安定度No.1だった。一方駒沢は、区間順位を見ると、往路が西田7位・藤田敦史2位・大西4位・藤田幸則7位・足立3位、復路が河合4位・前田3位・北田11位・佐藤1位・古賀5位となっている。大きなブレーキは8区の11位だけだが、藤田敦史・佐藤裕之以外にやはりもう一つ抜け出る選手がいなかった、あるいは他の選手がもう一皮剥けてなかったということかな。昨年の復路全区間2位のような離れ業は、そう簡単に再現できなかった。」

馬八
「山梨は?」
野次郎
「山梨は、横田と大崎が全日本の実績(区間2位・1位)からみてかなりやりそうだと思っていたが、二人ともやはり非常に良い走りでしっかり区間賞を取った。ワチーラは、前半は区間新が期待されるほど飛ばしたが、やはり後半ばてたようで、区間2位で、爆発的な走りは見られなかった。山梨は、敗因が古田の欠場に尽きるように言われているが、区間順位が往路の森政8位・尾池12位・ワチーラ2位・中馬3位・横田1位、復路が境田3位・藤村11位・濱田7位・西川2位・大崎1位と良いのと悪いのとがはっきりしすぎた感じがする。いかにコンスタントに安定した走りが出来るかが課題だろうな。」
 
【中央・順天堂・早稲田】
 
馬八
「3強に続く3校の結果をどうみる?」
野次郎
「中央は、全日本ので惨敗から見事立ち直って、4位に食い込んだ。区間賞はなかったが、反面10位以下のブレーキもなく、無難にまとめたという感じかな。目標の3位以内には届かず、3強の壁は厚かったということか。
順天堂は三代と1年生3人の出来次第と思っていた。往路は10位とシード権が危ない位置だったが、復路は区間8位・4位・4位・4位・4位と良い位置をキープし、さすが復路の順大の面目躍如で、総合5位まで上がってきた。」

馬八
「早稲田の往路はさすがだったね。」
野次郎
「早稲田は、1年生佐藤の3位も立派だが、何といっても梅木の区間賞が凄い。藤田・三代・山本らの区間賞候補にかなりの差をつけて1:07:48と堂々たる記録だった。10000mの持ちタイムでは2区の15人中10位と見劣りしても、20kmを超す箱根は全く別だということをしっかり見せつけた。この梅木と続く山崎の快走で4区まで1位を保ち、ひょっとすると往路優勝かと思わせたが、4区で詰められ、5区山登りでつかまってしまって往路3位。復路総合順位は10位と順天堂と逆になってしまって、通算総合6位と、やはり往路だけのチームで終わってしまったと思う。」
 
【シード権争い】
 
馬八
「シード権争いは、おれ達の予想通りで番狂わせがなく、神大・駒沢・山梨・中央・順天堂・早稲田・拓殖・大東の8校は指定席として順当に入ってきた。残り1個の椅子に日大が上がってきたが、この頑張りは予想外だった。日大の予選会の記録から見ると、とてもシード権は難しいと見ていたが、何と7位に入ってきた。しかも予選会と違って山本佑樹ひとりに依存してのシード権でなく全員で勝ち取ったシード権だった。古豪復活成ったという感じだ。」

野次郎
「大東はシード権を取ったもののヒヤヒヤだった。10位東洋のアンカーが区間3位に入り、23秒差まで追い上げられたが辛うじて9位を確保した。2・4・6・7・9・10区と6区間で二桁の区間順位になってしまって、去年せっかく3位に入り、強豪復活かと思わせたんだが、また立て直しが必要だな。」

馬八
「東海の予選落ちは、可能性はあると思ったがまさかブービー14位とは思わなかった。事前のコーチの談話でも故障者が多く危ないと言っていたが、ここまで落ちるとはね。2区の諏訪の区間5位以外は下位を低迷し、区間順位11位以下が7人では無理もないが。」

野次郎
「また往路で区間賞を2つも取っていながら総合12位とシード権を逃した専修も意外だな。2人の区間賞以外は、区間14位・9位・11位・14位・10位・15位・11位・9位と殆どがブレーキ状態だった。
過去20年のデータではそんな極端な例はないな。神大が第72回で3区高津・7区渡邊・9区重田と区間賞3つ取りながら4区高嶋の途中棄権で予選会に回ったが、あれは特別だ。棄権がなければ総合で中央に次いで2位には入れたはずだった。」

馬八
「拓殖と帝京がマスコミで話題になったが・・・・・・。」
野次郎
「おれ達も、拓殖はもうちょっと頑張ると思ったんだが、8位に終わった。でも神大が第68回に復活してきてから、14位・8位・7位・6位・棄権・優勝・優勝という経緯をたどったのを考えると、これからだという気がするね。
帝京は初出場で、走れるだけで嬉しそうで、中継所でも余力を残していてばったり倒れ込む姿が殆ど見られなかった。これからほんとの箱根の苦しさ・難しさを味わうんじゃないか。」

馬八
「他の東洋・日体・関東学院は?」
野次郎
「東洋は10000m28分台が3人もいるというんで、もう少し良いと思ったが、往路の不振が尾を引いて、復路で頑張ったが23秒差で届かなかったな。
日体大は、往路区間12・12・15・10・9位で復路総合13位、復路が5・5・10・7・7位と総合6位まで追い上げたが、通算総合11位に終わった。かつての名門復活はまだまだ遠そうだな。
関東学院は往路2区からずっと通算で14位だったが、復路は、東海をかわして、13位まで盛り返した。おれ達神奈川県民としては、もう少し頑張って、シード権争いに絡んで欲しかったが、まあ、13位はやむを得ないところかな。」
 
【追っかけ】
 
馬八
「ところで、おれはずっとTVでの観戦だったが、野次さんは追っかけをやったようだが、どうだった?」
野次郎
「例年は、2区5km・9区18km地点の子安の入江橋付近で応援してきたが、今年は写真を撮りたいと思ったので、追っかけた見た。
まず、6時起きして、7時半過ぎには大手町に駆けつけ、8時の大手町のスタートを見送った。
東京駅から東海道線と京浜東北線で新子安に行き、駅前の第1京浜(国道15号線)で、2区の梅木・三代・藤田らの上位から、11番目で通過した小松、最後尾の帝京大まで応援した。

新子安から京浜東北線で横浜へ出て、東海道線に乗り換え藤沢まで行き、藤沢橋で3区のランナーを応援した。3区は殆どの区間が鉄路から離れているが、藤沢駅から10分余りの藤沢橋が唯一近いところだ。ここでは、早稲田山崎・駒沢大西・順天堂宮井の順で通過して、やや遅れて日大、さらに東海高塚・中央藤田将・拓殖鈴木・神大野々口の4人が5位グループを形成して通過した。野々口が8位から5位グループまで25秒程一気に追いついてきて、これは後半追い上げてもっと上位に行けるかなと期待したが、前半がオーバーペースだったのか、後半神大らしからぬ走りで一旦並んだ中央藤田将に差をつけられ、結局日大を抜いただけで6位で渡邊にたすきを渡した。

追っかけの方は、藤沢駅からまた東海道線に乗り、二宮駅で降りて4区を応援した。二宮駅から国道1号へは100mくらいしかない。小田原まで行こうかとも思ったが、神大がトップでないこともあって、やや意欲が湧かず、また元々箱根登山鉄道の本数が少なく、間に合いそうもないと思って止めた。
二宮の4区7km地点では、目の前を渡邊聡が力強い走りで、早稲田荒川・駒沢藤田幸則・順天堂宮井・中央国武・専修平尾を追いかけ、平塚で4:37あった早稲田との差を、目の前では3:47に50秒縮めていた。また後ろの山梨中馬にはその時点で28秒ほど広げて、45秒差にしていた。

で、二宮からまた東海道線に乗って横浜に引き返して、自宅に戻り、勝間の驚異的大逆転をTVで見れたという訳だ。でも二宮で降りなければ、箱根登山鉄道の風祭駅のそばの小田原中継所まで行って、渡邊から勝間へのたすき渡しを見れたはずだ。

追っかけでは、4区と5区(6区・7区)をどう応援するかが一番難しいが、小田原中継所でたすきリレーを応援するのであれば、15大学10区間150人の全選手を応援することも不可能ではないと思う。
東海道線に乗っていて驚いたのは、追っかけをする人が結構多いことだ。電車の中でポケットラジオを聞きながら、時刻表と公式プログラム・スポーツ新聞の通過予想タイム表などをにらめっこしている人が沢山いて、藤沢駅や二宮駅でぞろぞろ降りたり乗ったりしていた。」
 
【来年の展望】
馬八
「来年のことを言うのはいかにも早すぎるが、このままだと来年も3強の争いになりそうだね。」
野次郎
「3強とも、今回のメンバーから抜ける4年生が2〜3人と少なく、大半のメンバーがそっくり残ることになる。

神大は4年生が高津・中野・中里の3人抜けるだけで、今回のメンバーのうち7人が残る。前回3区で2位になって今回は出なかった大川智裕が主将に決まって当然頑張って来るだろうし、前回の今泉・今回の中里のように4年生で最後にぐっと伸びる選手が出るだろうし、また今回と同様に今の1年生(林・鈴木両健太郎ら)が2年生になって、力をつけて出て来るのは間違いないし・・・・。さらに土谷修(大牟田)・田中俊也(世羅)・相馬雄太(大田原)と全国高校駅伝で上位を走った有力選手が入ってくるらしいし、次回も今回以上にチーム内での競争が激しくなりそうだ。

駒沢も山梨も抜ける4年生は2人だけで、今年のメンバーが8人残る。駒沢は、新入生として高校長距離No.1の揖斐祐治(土岐商)や高校駅伝区間賞の神屋伸行(西脇工)らが入るらしく、戦力アップにはかなり自信をもっているようだ。
山梨は、古田・ワチーラの二人の大砲と横田・大崎・西川・森政ら、主力がそっくり残るし、新入生は不明だが、当然全体的な底上げをしてくるだろう。

中央は抜ける4年生が4人とやや多いが、高校5000m日本人NO.1の杉山智基(有田工)や花田俊輔(愛工大名電)らが入り、戦力強化を図っている。
順天堂も今年走った1年生3人が順調に伸びてきて、さらに新入生奥田真一郎(西脇工)・入船満(鹿児島商)・野口英盛(清風)らが力をつけてくれば、3強・4強に割って入ってくる可能性は十分ある。
早稲田は梅木・荒川・中村と主力3人が抜け、山崎・佐藤敦之が中心となる。選手層の薄さは解消されそうもないが、そこは伝統の力で頑張ってくるだろう。」

馬八
「神大3連覇の可能性はどうだろう?」
野次郎
「過去のデータで2連覇は21回(今回の神大の2連覇を含む)と多いが、3連覇以上は4回(日大(第16回から)・中央(第35回から)・日体大(第45回から)・順天堂(第62回から))と意外に少ない。しかも、その3連覇したチームは3連覇で終わらず必ず4連覇以上しているのが面白い(4連覇が日大・順天堂、5連覇日体大、6連覇中央)。という訳で、神大も是非3連覇・4連覇を実現して欲しいね。」
 
【次回予告】
馬八
「野次馬トークの次回(その3)は、1月18日(日)に広島で行われる都道府県対抗男子駅伝について語ろう。」
野次郎
「神大からは神奈川県代表の3人に故郷代表4人と、7人も出るらしい。また静岡県代表で山梨古田と日大山本佑樹が揃って出るらしいし、箱根を走った選手があちこちの県代表で走るようで楽しみだ。」