箱根駅伝野次馬トーク
(その5 関東インカレ観戦記)


野次郎
「関東インカレが5月の中旬に開催されてから、もう1ヵ月になる。陸マガ・月刊陸競両誌の7月号も発売されて、関東はじめ各地区のインカレの記事がたっぷり載っているが、オレ達もせっかくじっくり見てきたし、陸上誌とは一味違ったオレ達なりのレポートをしてみよう。」

馬八
「うん。関東インカレで今年の箱根関係の各大学の戦力の一端が見えたしね。」
 
【ハーフマラソン】


「まず、5月10日(日)に川崎市多摩川河川敷の古市場競技場コースで行われたハーフマラソン。
1部は東海大の諏訪利成、2部は駒沢の藤田敦史が優勝したが、二人ともぶっちぎりの圧勝だったね。」


「10時に1部の33人がスタートして、トラックを2周して、集団となってロードへ出ていった。ロードといっても、土手沿いのジョギングコースらしく、茶色の土がむき出しのコースで、どこかの大学の関係者が、ひどいコースだとぼやいていた。」


「その片道4km程のコースを5回行ったり来たりするもので、見る側からすると順位の変動がわかりやすいコースだったけどね。2部の40人が30分差でスタートして、選手たちが次々にあっちから来たりこっちから来たり、また目の前で同時にスレ違ったりして、結構忙しかったな。」


「レースは、1部の方では、しばらく団子状態が続き、11kmあたりから9人のトップ集団(諏訪・高橋・鈴木・沢柳・尾池・横田・久保田・佐藤洋平・添田)になったが、後半15kmあたりから諏訪が抜け出し、独走状態になり、2位以下を全く寄せつけず、危なげない優勝だったね。」


「諏訪のタイムは1:04:58。彼は今年の箱根では2区を走り区間5位だったが、この半年間の成長は目覚しく、一躍大学長距離界のトップレベルに台頭してきた感じだ。
2位・3位には山梨の横田と尾池が入り、横田は箱根山登りで区間賞を取った実力を見せつけたし、尾池は2区古田の突然の代役でブレーキになったが、この半年で着実に力をつけてきているようだ。
4位には中央の久保田が入り、5位と7位に東洋大の沢柳と鈴木が、6位に日体の佐藤洋平が入った。7位までが1時間05分台だった。早稲田は8位に佐野、順天堂は9位に高橋が入った。複数で上位を占める大学が山梨と東洋だけと少なかった。日大は下位に甘んじている。」


「2部も7kmくらいから10人の集団になり、半分過ぎたあたりから、駒沢藤田敦史が抜け出し、こちらは見る見るうちに2位以下との差を広げていき、後ろが全く見えない状態が続いた。ゴールでは2位に1分14秒もの大差をつける圧勝だった。記録も1:04:36と1部の諏訪の記録1:04:58を上回り、関東一となった。
2位には同じく駒沢の西田が、6位にも駒沢の前田が入り、ハーフでの駒沢の強さが目立った。」


「神大は岩原・町野が駒沢西田・前田、拓殖船木と5人でずっと2位集団を形成していたが、終盤駒沢西田が抜け出し2位を確実にし、前田は遅れ始めて6位に落ちた。で神大2人と船木で3位争いを展開、最後のトラックの1周で岩原が一旦抜け出て3位に入るかと思ったが、残り200m位で船木にかわされて惜しくも4位となった。
町野が5位、キャプテン大川が12位と神大の3人が一応上位に並んだ。町野が力をつけてきているのが心強い。大川は前半10人のトップ集団にいたが、後半遅れて12位となった。去年の関東インカレハーフでは6位(1:06:05)だったが、まだ調子が戻りきってないようだ。」
 
【横浜国際総合競技場】


「10日のハーフはそれ位にして、15日〜17日の横浜国際総合競技場のトラックとフィールドの方に移ろう。」


「その前に、横浜国際総合競技場に初めて入ったので、その感想から・・・。まあ、とにかくデカイ。7万人収容の日本国内最大の競技場というだけあって、その規模の大きさに圧倒される。3月1日にオープンしたばかりだ。ワールドカップのメイン会場に名乗りを上げているが、サッカー専用でなく、陸上はじめ他目的に使われるようだ。
全席背もたれ付きで快適だ。ただ、貴賓席は屋根でカバーされて雨が当たらないようになっているが、記者席の下の方は露天状態で、3日目の朝方雨が降ったが、机が濡れていて、記者の評判はどうかなとちょっと気になった。
交通の便は悪くないが、メインスタンド(南西側)に行くなら、JR小机駅から行った方が10分程度で着き、JR・地下鉄新横浜駅で降りるより、5分以上近い。


「この競技場の名前は何とかならないのかね?横浜国際総合競技場なんて長ったらしくて、まともに言えないよ。例えば『新横(浜)スタジアム』とか、『新横(浜)競技場』とか、今更変更は出来ないだろうから、呼びやすい通称を考えるべきだろう。ちなみに横文字では「Yokohama International Stadiumになっている。」
 

【10,000m】


「では、トラック&フィールドへ。まず、15日(金)の最初の決勝種目の10,000mだが、2部は朝の10時半から、1部は夕方17:05から行われた。2部はカンカン照りの日差しを受けて、気温23度だったのに対し、1部は太陽が落ちた後で、気温21度と条件が大分違っていた。2部は駒沢佐藤・神大渡邊・大東萩原らがかわりばんこにトップに立つ展開だったが、後半渡邊がトップに立ち、大東萩原・小林・駒沢佐藤が追う展開となった。

意外だったのは、最後の2周から駒沢佐藤が着いていけず離され、渡邊と大東勢の勝負になった。神大渡邊は最後まで譲らず、追いすがる萩原らを振り切ってトップでゴールインした。萩原が2位、同じ大東の1年生小林(埼玉栄・去年の高校駅伝で1区3位)が3位と健闘。4位に駒沢佐藤、5位に拓殖吉田行宏、6位と7位に神大の小松直人と中村裕が入った。

小松はもうちょっと上の方に入っても良かったんじゃないかと思う。また中村は3年生だが、あの俵万智の神奈川県立橋本高校の出身で、全く無名の選手が育ってきたもの。雑草軍団神大の面目躍如といったところだ。これからが楽しみだ。」


「1部の10,000mはワチーラが優勝したが、タイム的にはいまいちだね。」


「そうだ。気象条件は2部より良かったのだから、もっと飛ばして良いはずだが、7000mのラップタイムは2部が20:38だったのに、1部は20:51と2部よりもスローペースだった。最後の1周でワチーラが猛烈にスパートして、中央小嶋らを突き放し優勝したが、タイムは29:08:36と29分を切れず平凡なものに終わった。2部の渡邊の記録29:15:03も必ずしも満足行くものではないが、1部のこの記録はもっと不満だな。関東のインカレ1部なら絶対28分台を出さなきゃあ。
なお、2位は中央小嶋29:12:25、3位は法政の伏兵坪田智夫が29:12:40、4位にハーフマラソンで優勝した東海諏訪が29:12:80、5位に早稲田山崎29:14:75、6位中央国武、7位山梨森政、去年の10,000mのチャンピオン順天堂三代は8位だった。」

 
【1500m】


「次に1500m。15日の午前10時から予選が、午後15:10から決勝が行われた。2部には神大から一昨年のインターハイと国体少年Aの1500mチャンピオンだった鈴木健太郎(2年生)が出た。故障上がりで十分練習が出来ていなかったようだが、予選は1位と0秒01と僅差の3位で通過し、これはひょっとすると、優勝も不可能ではない?と思っていたけど、まさか実現するとはね。
3時からの決勝では、流通経済大のマイタイがかなり飛ばし、鈴木はずっと4〜5番手で、マイタイから20〜30mくらい離されていたから、いいところ3位くらいかな?と思っていたが、なんのなんの、最後の1周の第3コーナーからの猛烈なスパートでマイタイを抜き、さらに最後の100mで拓殖の鈴木武道も抜き、あれよあれよと言う間に優勝してしまった。
タイムも高校時代のベスト(3:48:20)には達しなかったが、3:49:60と、1部の山梨学院宮崎の3:49:99を上回る、関東bPの記録となった。」


「インカレの1500mには、800mを同時に走る中距離専門型(山梨学院の宮崎はこのタイプ)と、箱根も走る中・長距離両用型の2つの型があるようだ。鈴木健太郎は箱根を走りたくて神大に入ってきたようだから、中距離専門ではなく、むしろ長距離を目指しているタイプだ。
かつて山梨学院の藤脇友介が関東インカレの1500mで4連覇して、箱根の6区山下りで3年間活躍したように、1500mと箱根の両方を走る人は珍しくないんだ。神大鈴木も箱根での活躍が期待されるね。
なお、月刊陸上競技7月号(37頁)に鈴木のゴールの写真が載っており、出身校が「豊橋工高」になっているが「豊川工」が正しい。」
 
【3000m障害】


「16日(土)に行われた3000m障害でも神大の同じ2年生の飯島智志が優勝した。」


「彼は午前中の予選では、水濠でつまづいてつんのめって転倒して水浸しになったが、立ち直って1位で予選を通過。午後の決勝では、終始トップグループにいて、最後の1周で素晴らしいスパートを見せ、2位以下をぐんぐん引き離し、圧倒的な強さで優勝を飾った。タイムは8:52:95と2位に6秒以上の差をつけた圧勝だった。
高校時代の全国ランクは18位で、神大に入って飛躍的に伸びた選手といえるね。1部の1位が順天堂の室政敬で8:50:93だったが、秋の日本インカレで飯島と室の対決が見物だな。」
 
【5000m】


「最終日17日(日)に行われた5000mは、2部の方は、1位が平成国際大のケニア人留学生カーニーで13:58:42、2位が拓殖の高須14:04:20、3位駒沢佐藤裕之14:05:21。神大勢は野々口が4位(14:13:38)、中澤は5位(14:18:25)、野間は20位(14:51:33)だった。」


「レースはカーニーと駒沢佐藤の先頭争いが続いたが、最後の1周でカーニーがスパートして突き放し、佐藤は追い上げた高須にも抜かれて3位になった。野々口はカーニーと佐藤を追って前半3位を維持していたが、残り3周で高須・マイタイに抜かれて一旦5位に下がり、最後にマイタイを抜いて4位に上がり、中澤はずっと8位につけていたが、最後の1周で猛烈に追い上げ、3人抜いて5位になった。」


「5000mの1部は、ワチーラが10,000mと合わせて2冠を達成。去年も5000mで優勝しており2連覇だね。」


「レースは、前半団子状態が続き、くるくるトップが入れ替わる展開だった。残り4周でワチーラがトップに立ち、小嶋・柴田・山崎・三代・小川らが追う展開となった。ラスト1周でワチーラが猛烈にスピードを上げ、一時は後続に10m近い差をつけたが、残り200mから三代が猛追し、ゴール寸前では1m差まで詰めたが及ばず、ワチーラが逃げ切った。タイムはワチーラが14:15:09、三代が14:15:39、3位に早稲田山崎14:18:86。4位中央小嶋、5位国士館小川、6位東海大柴田、7位東海高橋、8位法政坪田の順だった。

日大山本佑樹は10,000mにもエントリしていたが欠場し、5000mは一応走ったが、故障上がりのようで、おそるおそる走っているような印象だった。前半は後ろにつけていて、後半他の選手が落ちていって順位を上げたが、13位に終わった。」


「5000mのタイムは、ワチーラの優勝タイムですら、2部の4位野々口より悪かった。」


「レースの駆け引きなどあって、条件が違うから一概に言えないが、ハーフも、1500mも、5000mも2部の方が良かったことになる。1万も、気象条件から言えば実質的には2部の方が上かもしれない。中・長距離での1部・2部の差は全くないと言って良いね。」

【新入生の活躍】


「今年入学したばかりの1年生の長距離での活躍はどうかな?」


「さすがに、ハーフマラソンへの1年生の出場は少なかったが、10,000m、5000mには高校駅伝でならした選手が何人か出ていた。10,000mでは1部で順天堂の奥田真一郎(西脇工)が30:17:95で18位、2部ではさっきも出た大東大の小林秀行(埼玉栄)が29:16:71で3位と大健闘。同じ大東大の林昌史(浦和実)が30:22:89で12位、亜大の前田和之(諫早)が30:51:34で14位だった。

5000mでは、1部で東海大の柴田真一(市立船橋)が14:21:09で6位に、中央大の杉山智基(有田工)が9位、法政徳本(沼田)が17位、山梨小池(福岡国際大付)が23位、早稲田の新井広憲(報徳学園)が25位だった。2部では駒沢の神屋伸行(西脇工)が14:25:00で10位、同じく駒沢の揖斐祐治(土岐商)が14:31:76で15位だった。大東大の小林と東海柴田以外は目立った活躍とは言えず、ほろにがデビューという感じかな。」


「各競技とも各大学から最大3人までしか出れないようだし、一定期間内に標準記録を超えてないといけないし、高校を出てすぐ大学で活躍できる訳じゃないんだ。まあ、これからだろうね。」

 
【大学対抗得点争い】


「大学対抗の得点争いでは、1部はフィールドで稼いだ日大が111.5で平成2年からの8連覇を飾った。2位はトラックで85点を取った東海大が合計106.5点で入り、3位は筑波が104点、4位中央、5位順天堂、6位山梨学院、7位法政、8位日体大となっている。

2部はトラックの短距離とフィールドで着実に点を稼いだ慶應が108.5点と高得点で優勝、1部昇格を決めた。2位は中央学院65.5、3位は神大65、4位東大65、5位東農大41、6位駒沢35、7位東工大34、8位茨城大34だった。

神大はフィールドの三段跳でも淵脇が15m19で去年に続き優勝し、1万、1500m、3000mSCとあわせて4種目で優勝、65点と去年の60.6点を上回った。しかし、慶應が砲丸・円盤・やり投げの3種目で優勝するなど、投擲と短距離で圧倒的な強さを発揮して2部優勝し、神大念願の1部昇格は成らなかった。

慶應は長距離では見るべき成績は収めてないが、短距離・フィールドがここまでやれるのだから、長距離でも頑張って箱根駅伝の伝統校として復活して欲しいね。作者は蔭ながら応援してるんだから。」

 
【入賞者一覧から見る大学別戦力】


関東インカレ大学別中・長距離入賞者一覧を見て欲しい。大学別の入賞者の頭数から、現状での戦力レベルがある程度見えて興味深い。」


「そうなんだ。中・長距離だけでの得点と入賞者頭(かけもち出場を除外した)数とを見ると、1部・2部共通で、神大が得点47点・入賞者9人とトップ、山梨が44点・7人、東海大が40点・8人、駒沢29点・4人、拓殖25点・5人、中央24点・6人、順天堂23点・4、大東大20点・4、東洋18点・3人、専修13点・5人、早稲田13点・3人、平成国際大12点・3人、法政と流通経済が9点、日大、亜大、関学園大が各7点、国士館が4点、日体が3点となっている。」


「1500mと3000mSCの中距離を除き、ハーフ・1万・5千の長距離だけで見ると、どうだろう?」


「こちらも、神大が得点31点・入賞者7人とトップ、山梨が23点・4人、東海大が13点・3人、駒沢24点・4人、拓殖18点・4人、中央15点・3人、順天堂7点・1人、大東大13点・2人、東洋6点・2人、専修3点・2人、以下は皆1人で早稲田6点、平成国際大8点、法政6点、亜大1点、国士館4点、日体が3点となっている。

神大はかけもち出場を一切せず、他校がかけもち出場をした(得点争いを重視?)という違いはあるにせよ、神大の入賞者頭数7人というのは、神大の選手層の厚さが群を抜いていることを見事に証明しているんじゃないかな。次いで山梨・駒沢・拓殖が4人ずつ、東海と中央が3人ずつ、早稲田・大東・東洋・専修が2人ずつ、順天堂・法政・亜大・国士館・日体が1人ずつとなっている。」


「ちょっと気が早いが、今年の秋から冬の駅伝シーズンに向け、各大学の戦力レベルの一端が垣間見えた感じがするね。
日大は山本佑樹が故障上がりで入賞できなかったが、彼に続く選手がまだ十分育ってないようだ。
日体大は辛うじて佐藤1人が入賞した。伝統校東農大からは入賞者無しという結果だった。両校とも、短距離・フィールドはまずまずなのに、中・長距離は伸び悩みのようで、ちょっとさびしい。
関東学院も入賞者はいなかったが、秋の予選会突破に向けて頑張って欲しいね。」

 
【不出場有力選手と茶髪】


「今回の大会に出ていなかった有力選手では、神大の辻原幸生・勝間信弥、駒沢の大西雄三、山梨の古田哲弘・西川哲生、早稲田の佐藤敦之らがいる。故障か不調なのかもしれないが、秋までには調子を上げてベストの状態で駅伝シーズンに臨んで欲しいね。」


「今大会で面白かったのは、茶髪の選手が結構いたことだ。短距離にもいたし、今時珍しくないのかもしれないが・・・。箱根の山下りで区間2位に入った中央岩本が3000m障害と1500mに出たが、すっかりイメージチェンジしていたね。」
 
【天うららの須藤理彩】


「インカレと全然関係ないけど、NHKの朝の連続テレビ小説「天うらら」の主役をやっている須藤理彩(本名)が神奈川の高校陸上で活躍してことがわかったんだ。県立旭高校の2年の時に200mで25:36を出し、1993年の全国高校女子ランク59位(神奈川では2位)に入っている(陸マガ記録集計号より)。

今は大工の見習い役だが、陸上をやっていた娘らしく、きびきびしていて、颯爽としてるのが良いね。」