野次馬トーク
(その8 '99出雲・予選会・全日本と76回箱根展望)
(今回のトークも大変長いので、オンラインで読むと電話料の無駄になります。一旦「名前をつけて保存」して、後でオフラインでゆっくりお読みください。)
野次郎
「オレ達のトークも正月の75回箱根駅伝以来10か月ぶりだね。」
馬八
「出雲・予選会・全日本と、大学駅伝のイベントの前半が終わったし、箱根の前にまとめて総括しておこう。」
野
「エーアイ出版の『WWWイエローページVol.8』で、Saijo'sホームページが取上げられ、『野次馬トークが楽しい』と紹介されたし……。」
馬
「結構オレ達のトークを楽しみにしている方も少なくないようだしね。」
【出雲選抜大学駅伝】
野
「まず10月10日の出雲から」
馬
「戦前は、駒沢と順天が有力と見られていたが、結果は順天堂の圧勝だった。」
野
「順天は、まず1区の入船が20:24と鹿屋体大・永田と同タイムで、区間賞の第一工大・ドリウッチと2秒差の3位と好位置をキープ。
2区は岩水が区間2位でトップに立ち、3区は奥田が山梨大浜と同タイムの2位で二人並んで3区へたすきを渡した。
4区野口が区間賞を取り、山梨黒岩を引き離し、18秒差をつけて、5区へ。
5区宮井は区間5位で、区間4位の山梨尾崎に6秒縮められたものの、通算では1位をキープし、12秒差で5区へ。
アンカー高橋謙介は安定した走りで西川との差を広げ、区間賞も取って、全く危なげない勝ち方だった。6人ともブレーキもなく理想的な展開だった。」
馬
「1区では、鹿屋体大・永田の3年連続区間賞がかかっていたが、第一工大のドリウッチが、永田を2秒差で抑えて1位に入った。」
野
「山梨学院は、1区宮原が区間6位とやや遅れたが、2区、どこまで復活しているか注目された古田が快走を見せ区間賞を取って通算3位に踊り出た。3区大浜が順天と並んで先頭争いをし、4区黒岩・5区尾崎と粘りながらも、徐々に順天に離されてしまった。アンカー西川も区間2位と悪くなかったが、順天とは23秒差がついてしまった。
山梨は、大会前は必ずしも評価されてなかったが、2位に入り、次につながる走りで、結果としては上々だったんじゃないかな。」
馬
「駒沢は、1区大西が8位と出遅れ、揖斐が追い上げ4人抜いて4位に上ったが、3区・4区の布施・松村の1年生が区間6位・5位と余り振るわず、4区までに1位順天と1分18秒も離されたのが響いた。
5区西田が区間賞で通算3位に上がったものの、5区までに1位順天との差は1分も出来てしまった。
アンカー神屋も前半オーバーペースだったらしく、区間4位と通算3位のままで終わり、結局一度も先頭争いに加わることなく、出雲2連覇は成らなかった。」
野
「駒沢がこういう結果になるとはちょっと予想外だな。西田・大西・神屋・揖斐の4本柱に、プラス2人なら、順天とからんで行けると見ていたんだが。プラス2人が1年生で、初めての駅伝はちょっと荷が重すぎたかな?」
馬
「これから全日本・箱根と2人ずつ選手を増やして行かなくちゃならないのに、4本柱以外のメンバーが揃わないと、しんどいんじゃないかなと思ったね。」
野
「中央は、1区杉山が10位、2区永井も10位と低迷したが、3区板山が区間4位、6区藤原が区間3位に入って、徐々に順位を上げ、アンカー藤田将弘が競技場内のデットヒートで神大を抜き、4位に食いこんだ。」
馬
「神大の1区田中が遅れているというのは、オレ達は現地からの情報でリアルタイムで知っていたから、テレビの中継録画を見ても、余り驚かなかったが、知らなかった人はびっくりしたと思うな。」
野
「田中は世羅高出身で高校時代5000m14分00秒のタイムを持ち、97年高校ランクでは揖斐・杉山に次ぐ屈指の好ランナーなんだ。1年では故障に泣き、出場の機会が無かったが、2年になってようやく本領を発揮し始めたところだった。
田中は10月2日の鴻巣ナイターでも良かったし、その前7月16日の夏の東京陸協記録会でも好調だったから、1区田中と聞いたときも全然違和感なかったが、中盤から付いて行けなかった。駅伝初出場で、しかも1区を任されて、力み過ぎかな?区間14位と予想外の順位だった。」
馬
「神大は2区野々口、3区スズケンこと鈴木健太郎と2つずつ順位を上げ、追い上げたが…。」
野
「野々口も完全に調子を戻していなかったようで区間6位、96年インターハイ1500mチャンピオンのスズケンこと鈴木健太郎も駅伝初登場だったが、調子をつかみきれず、区間7位と不本意な結果に終わった。
4区相馬は、区間2位で通算順位を6位に上げ、辻原も区間2位ながら区間新で通算5位に引き上げた。アンカー小松には、4位に入って欲しいと思ったが、競技場内での中大藤田とのデットヒートの結果、残念ながら2秒差で5位に終わった。」
馬
「早稲田は16位と出雲では最低の順位になってしまったね。」
野
「2週間後の箱根予選会に向けて主力メンバーを温存し、いわば2軍が出雲を走る結果になった。そのため16位という、ちょっと悲惨な順位になってしまったが、まあやむをえないだろうね。」
馬
「この出雲の結果、順天の安定振りが一段と目を引き、これは90年(箱根91年)の大東大以来9年ぶりの3大大学駅伝での3冠濃厚かと思ったね。」
野
「うん。順天の強さはYKK+Jの中で、頭ひとつ抜けていると感じさせた。」
馬
「山梨が古田の復活に加えて、他のメンバーが安定した走りを見せ、今年は去年と大分違うなと感じたね。」
野
「駒沢は4本柱+αのアルファ部分に多少不安を残す結果になった。」
馬
「オレ達が応援する神大は、優勝争いの蚊帳の外になってしまって、テレビにもほとんど映らなかった。」
野
「元々距離の短い出雲は得意とはいえないが、序盤遅れたものの、徐々に追い上げてきて、最後に競技場内で見せ場を作ってくれて、一応5位に入ったのは、それなりの実力だろうな。
今年の箱根優勝の順天が、去年の出雲では6位だったことを考えれば、まだ希望があるけどね。」
【箱根予選会】
馬
「10月24日の予選会。
オレ達は、帝京がぶっちぎりで予選会トップ通過か?と予想したが、そのとおりになったね。」
野
「秋の日本インカレ以後非常に好調で、10月2日の鴻巣ナイターでも各組の上位にずらっと並び、この力は侮れないと思わせた。予選会のレベルを超えた力を持っていると感じたな。」
馬
「予選会は10位以内に3人、50位以内に9人と、赤いユニフォームが目立った。
帝京の目覚しい躍進振りを見て、かつての神大を思い起こす人も多いようだね。」
野
「確かに、予選会から2回連続本戦出場を果たし、3度目の今回の帝京の勢いは、神大が急成長してきた頃とそっくりだ。高校時代はどちらかと言えば無名な選手が多く、大学に入ってから力をつけてた選手ばかり、というのも神大と似ているね。何よりがむしゃらに、箱根を目指している姿が、予選会から這い上がってきた神大を彷彿とさせるね。」
馬
「法政が2位に入ったが……。」
野
「法政には失礼だが、これは若干予想外だった。ここまで頑張るとは余り考えてなかったな。
去年は6位ですれすれの通過だったし、そんなに戦力がアップしているとも思えなかった。エース坪田が上位に入るのは当然として、その他の選手が非常に良く頑張った。
12人全員が100位以内というのは、去年の帝京以来だ。(73回の神大・山梨も12人が100位以内、ただし当時は14人が出場)」
馬
「3位に早稲田。出雲での温存が効いて?3位で無事通過した。でも期待の1年生中尾が故障続きだったようで170位、学内では11番目だった。」
野
「エース佐藤が6位、原田が11位など他の選手が頑張ったから良いようなものの、11番目の中尾が170位、阿部が171位と極端に順位が下がっていて、一歩間違えると本戦から外れかねない、薄氷の通過とも言えるな。」
馬
「4位日体大。他校の出来次第では、連続出場が51回で途切れるんじゃないかと心配されたが……。」
野
「危機感をばねに夏合宿では相当走り込んだらしく、4位に食いこんだ。10位以内の選手こそいないが、20位台から50位台にかけて9人も、続々とつながってゴールしてきたね。」
馬
「5位に関東学院が入った。」
野
「関東学院は面白い存在かなと大会前から期待していたが、期待どおり、1年生エースの尾田が10位と健闘し貯金を作り、また他の上級生も40位以内に4人入り、2年ぶりに予選会通過、本戦出場を果たした。」
馬
「拓殖は帝京・早稲田と並んで予選会の3強と目されていたが、6位と意外にもすれすれ通過だった。」
野
「発表の時、5位までに名前が無くて、どうなっているんだろう?このまま呼ばれないのでは?と一瞬思ったが、まあぎりぎりセーフだった。
10人が101位まで入っていて、『予選会を通過するには、全員が100番以内』という条件をおおむねクリアしたが、50位以内が3人しかいなかった。
米重監督が『おごりだ』と厳しく反省していたが、ヒヤッとしたろうね。」
馬
「予選会で学内で10番以内に入った選手の10000m平均持ちタイムは、拓殖の29:44.8が一番良く、次いで帝京の29:49.6、関東学院の30:02.1、法政の30:03.6、早稲田の30:05.5、日体大の30:07.4の順に並んでいる。
7位の農大は予選会プログラムに5000mのタイムを載せている(14:40.0)ので、正確に比較できないが、8位専修は30:10.7、9位の明治も30:16.3といずれも、本戦出場の6校に及ばない。
以下平成国際30:48.4、中央学院14:57.0(5000m)、亜細亜30:19.0、国学院30:42.9、国士舘30:56.7となっている。」
野
「拓大米重監督が『予選会1位通過を狙っている』と言っている」とNTV中継録画の中で伝えられたが、持ちタイムからすれば、当然1位を狙える力があった訳だ。
この持ちタイムを見ると、本戦出場6校が上位を占めていて、予選会では番狂わせはなかったことになる。」
馬
「本戦出場成らず、涙をのんだ大学を見ていこう。
7位に農大だが、監督も代わって、伝統校復活にかけたが、惜しくも今一歩及ばなかった。」
野
「チーム6番目が51位と上位にいて、そこそこ目立ったが、あとが112位以下でバランスが良くなかった。本戦出場が途切れて3年になる、そろそろ復活しないとね。」
馬
「8位に専修。」
野
「春の記録会など、他の大学が5000m中心で走っているのに、専修はほぼ全員が10000mを走り、これは気合が入っているなと思って見ていたんだが。2年生虎沢の19位が最高で、あとは50位以下で、しかも100位前後が多く、力及ばなかった。」
馬
「9位に明治。
古豪明治も、高校で活躍した選手を集め、箱根復活を図っていて、去年の予選会12位から3つ上げて9位としたが、まだまだ予選会を突破するには力が不足しているようだ。
野
「10位平成国際大。
結果発表の時ボードに掲示されるのは10位までだが、『10位平成国際大!』と発表されると『おー』とどよめきが起きた。73回の17位から15位・13位と2つずつ順位を上げてきて、今回は10位となった。留学生依存は変わりないが、少しずつ日本人選手も力をつけて来ているということかな。」
馬
「11位中央学院。今年の箱根は大方の最下位予想を跳ね返して、13位と健闘したんだが。」
野
「産経新聞の10月4日の月曜夕刊の『学』で中央学院の駅伝チームが『雑草軍団』として取上げられていた。練習量では他に負けないと連続本戦出場を狙っていたが、11位と大きく落ちこんだ。
関カレにも日カレにも、全日本選考会にも出ず、箱根一本に絞って頑張ってきたようだが、100位以内が6人で、しかも大半が50位以下と振るわなかった。」
馬
「12位亜細亜大。ここ10年余り予選会では一桁順位で、本戦出場も多かったが、ついに12位に落ちてしまった。監督が代わって巻き返すはずだったんだが…。100位以内が4人しかいなかった。」
野
「13位国学院。今までの予選会タイムの最高が10:52:25だったのに、今回10:28:03と急速に力をつけてきている。本戦初出場もそう遠くないと見たがどうだろう。青東駅伝で、神大・青学とともに実業団のいなくなった神奈川県チームを支えている。神奈川県民としては国学院にも頑張って欲しいな。」
馬
「14位国士舘。ここも大体予選会10位以内を維持してきたんだが、14位とちょっと落ちこんでしまった。エース小川博之に箱根を走らせたいと思う人はかなり多いはずだ。今年は12人中1年生が6人も占めていて、1年生の割合が最も高い。それだけ今年は不十分な戦力だったが、来年は期待しても良いんじゃないか。」
野
「15位に筑波が入った。箱根本戦は70回記念大会(予選会から11校出場)以降出てないが、このままでは次の記念大会も危ぶまれる。短距離やフィールドではかなりの成績を上げているし、女子は全日本大学女子駅伝で初優勝したんだから、男子長距離も強くなれると思うけどね。」
馬
「16位創価。予選会はずっと12・13・14位だったが今回は16位とちょっと下げた。」
野
「17位慶応。日本インカレ・ハーフ6位のキャプテン丸山が前半先頭に立ち意欲的なレースを見せ、23位に入ったが、100位以内は彼だけだった。チームの10番までが全員3年生以下だから、来年は期待できるかもね。」
馬
「慶応も記念大会が20校枠になってから50回、60回、70回と3回連続出場を果たしている。次の80回大会で連続出場なるか注目したいね。」
野
「流通経済はこの4年間11位・15位・16位・15位だったが、留学生がいなくなったためか、ちょっと下げて18位だった。
また、東大は新妻が14位と上位に入ったが、2番手が174位と後が続かず全体では20位だった。」
【もう一つの予選会】
馬
「10時15分近くになって、主な大学がほとんどゴールして、発表会場の方に移動しようとしたら、ちょっと意外な光景に出くわしたね。」
野
「突然応援している女子学生数人が手を取り合って飛びあがって喜んでいる姿が目に入った。何だろうと思ったら、規定時間の1時間15分以内に都立大の10人目の選手がゴールしていたんだ。よほど嬉しかったようで、涙を流さんばかりに喜び合っていた。それを見てオレも胸にジーンと来るものがあった。」
馬
「本戦出場争いには手が届かなくても、こういう目標を持って予選会に出ているところもあるんだ。それぞれに箱根への想いがあって、それを目指して頑張れば、いつか本戦出場につながるという夢があるんだろうな。」
野
「今年から予選会の出場資格が厳しくなって、5000m持ちタイムが17分以下と去年までの18分以下から1分短縮された。ある国立大のHPに『本戦出場に届かない大学の参加を押さえるという目的で(おそらく)作られた標準記録が昨年の5000m18'00"からさらに1分引き上げられた影響…』で予選会出場が途切れ、『予選会を目指して走ってきた選手も多い中,非常に残念です』と述べられていたね。」
馬
「去年の予選会出場が513人で制限タイム内完走が409人、今回が369人出場に対し制限内が347人と完走出来なかった選手の数が去年の104人から今年は22人と大幅に減って、絞った効果があったと言えるけどね。
交通規制の問題とかいろんな事情があるんだろうが、箱根駅伝の裾野をもう少し広げてやっても良い気がするね。」
【全日本大学駅伝】
馬
「次に11月7日の全日本大学駅伝。」
野
「イヤー、駒沢の神屋の凄さを改めて見せつけられた。」
馬
「8区での山梨尾崎とのつば競り争いは見ごたえがあった。」
野
「尾崎も春の関東インカレハーフで優勝するなど、実力をつけており、50秒差なら逃げ切れると思ったんだけどな。
神屋がじわじわ追い上げてきたが、かなり無理している感じもあって、追いついた後は余裕のある尾崎の方が差を広げるかなとも思ったが、神屋の方が力を残していたようだ。」
馬
「駒沢は3区揖斐の6人抜きの区間賞も大きいが、1年生が予想外の頑張りだった。」
野
「駒沢の出雲の結果を見て、4本柱はしっかりしているが、あとのメンバーを揃えるのに苦労するのではないかと考えていたが、どうしてどうして、1年生が急速に成長してきた。1区布施が9位だったものの、5区・7区で島村・松下と二人が区間賞の走りだった。
タイム差グラフを見て分かる通り、2区西田は古田と1分38秒差まで開いたが、3区以降はぴたっと1分10秒前後の差を維持して、離されていない。」
馬
「山梨は、2区古田の本格的な復活の走りで、一躍トップに立ち、3区黒岩・4区カリウキ・5区大浜・6区宮原・7区清田までずっと1位を保っていたんだがな。カリウキが区間2位で、駒沢と1秒しか差が無かった。ここで大きく貯金出来なかったのが響いている。また7区で2年生清田が区間6位で、駒沢の1年生松下に26秒の差をつけられていて、下級生の差が出た。」
野
「万年2位から抜出し、やっと優勝かと誰しもが思ったが、やはり全日本では勝てない。初優勝が目前でするりと逃げてしまった。」
馬
「最終区での逆転は、早稲田の渡辺康幸が中央の松田を抜いて以来じゃないかな?」
野
「そうだな。全日本の8区での逆転優勝は、秋開催になった第20回大会以降では、第27回の早稲田だけだ。その時は7区まで神大・中央の後の3位にいて、アンカー渡辺康幸が1:31差を逆転して優勝したが、それ以来、今回が2度目だ。8区19.7kmと距離が長い割には逆転はなかったんだ。」
馬
「今回の全日本は、オレ達の戦前の予想では順天が絶対有利かと思ったが…。」
野
「ウン、箱根での10年ぶり優勝の勢いで関カレの長距離で6人・日本インカレ長距離でも7人入賞。鴻巣ナイターでも上位に顔を並べていた。
出雲では予想どおりの初優勝。その1週間後の10月17日の金沢百万石ロードレースのハーフマラソンで、高橋が優勝、入船、宮井、野口と続き、宮井までが62分台、野口も63分台で、上位を独占。
青東駅伝でも千葉代表で奥田・野口の2人が第5日目11月1日の36区と39区を走り、社会人相手に区間2位・3位と上位に入っていた。
という訳で、マイナス要因が全く見られなかった。この調子なら3大大学駅伝の3冠は固くなって来たと思ったね。」
馬
「でもこの好調さがホントに箱根まで維持できるのかな?とやっかみ半分で疑問を持っていたが、全日本で早くも3冠の夢は消えた。」
野
「やはり連戦の疲れが溜まっていたのか、あるいは調整がうまく行かなかったのかな。」
馬
「入船が1区2位で順調な滑り出しに見えたが、岩水が区間5位、政綱は9位、宮井が4位、奥田が3位、野口が2位、坂井が5位、アンカー高橋が3位と、結局順天は区間賞なしだった。」
野
「いくら強くても、誰もがいつもいつも完璧な走りが出来る訳ではない、好不調の波が必ず訪れるという見本かもね。」
馬
「中大は通算で、1区花田8位、2区杉山10位、以下3区野村7位、4区中川9位、5区池上9位、6区板山8位、7区富田7位と低迷、これでは上位は無理かと思ったがね。」
野
「6区板山が区間5位、6区富田が区間2位と追い上げてきて、最後アンカー1年生藤原が頑張って4位に入った。」
馬
「中央の1年生藤原は、去年の西脇工の優勝メンバーだが、同じ優勝メンバーで早稲田に行った中尾や、日大に進んだ双子の清水将也・貴也兄弟ほど注目されていなかったんだけどね。」
野
「鴻巣ナイターで大牟田出身の野村と1年生コンビで1位・2位とワン・ツーフィニッシュで、なかなかやるなと思わせたが、ここまで伸びるとは予想外だ。最長のアンカーに起用されるだけの実力をつけて来たということだろうな。」
馬
「神大は、いったいどうしたんだろう?直前の情報ではかなり調子が上がっていると聞いていたんだが。」
野
「小松・相馬を1区・2区に並べて、前半から上位とからんで行けば、出雲の二の舞はないと思ったんだがなー。」
馬
「小松が誤算だったね。まさかずるする後退していくとは、今までの小松からは想像できなかった。」
野
「2区相馬も前半追い上げて、早大佐藤・法政坪田と競っていたのに、後半離されてしまったようだ。」
馬
「3区スズケンは順位を2つ上げたが、区間9位とちょっと納得行かない。こんなモンじゃないね。本来の力を出し切ってない。」
野
「4区辻原が区間賞を取って神大の意地を見せたし、6区石本も区間賞の山梨宮原と9秒差の4位と健闘した。7区勝間も完璧とは言えないが区間4位とまずまずの走りだった。」
馬
「キャプテン町野が最後のたすきを受取った時点で、後ろの中大とは1分30秒差あり、19秒前を行く東海大を抜いて4位は固いかなとふんでいたが、ゴール直前のテレビを見て仰天したね。」
野
「ホント、まさか後ろの中大や京産大にひっくり返されているなんて全く想像してなかった。」
馬
「皆が調子良かったはずなのに、全然身体が動かないというのは、金縛りかな?
2区相馬も5区金原も、全然実力とかけ離れた走りだったね。」
野
「直前に調子が良すぎて、『勝ちに行く』という意識が強すぎたんじゃないかな?それが金縛り状態を生んだのかもしれないね。」
馬
「8区の駒沢と山梨の逆転、中大と神大の逆転を見て、20kmは怖いと再認識したね。」
野
「やはり長い距離ではホントに何が起きるかわからない。
箱根ではこれが10区間にわたる訳で、10区間のどこで何が起きてもおかしくないんだと、いまさらながら箱根の距離の厳しさを知ったね。」
馬
「東海大が前半トップグループにつけ、7区まで4位を保って、最後は7位になったが、非常に善戦したね。」
野
「そう、1区柴田が区間3位で、後の選手もその流れに乗ったんだが、駅伝では流れに乗ることがいかに大切かを証明した。
東海大は出雲では11位と惨敗し、かなり危機感をもって全日本に臨んだようだ。」
馬
「ところで、早稲田が出雲と予選会と全日本の3つを走って、大変だった。だから出雲での主力温存までやったんだが、この出雲と予選会と全日本の3つを走った話しは余り聞かないが……。」
野
「そう。この3つを走るのは、余ほど運が良いと言うか悪いというか、これを走る条件はかなり狭き門なんだ。
まず出雲と予選会の両方を走るには、その年の箱根で10位になることが絶対条件だ。9位以上なら予選会に出ないし、11位以下では出雲に出られない。その上全日本を走るには、シード校を含めて11校だから、実力的に関東で11番以上を維持してないとダメなんだ。シード校(前年の全日本3位以内か箱根3位以内)の数にもよるが、今年の場合は6月の全日本選考会で6位以内に入らなければならなかった。
過去には94年の法政と93年の日体大が3つ走っている。日体大は出雲9位で、その中のメンバーが予選会の上位にも入っているから温存はしなかったようだが。」
馬
「予選会に出た法政・早稲田・拓殖が全日本に出ているのに、予選会ダントツの帝京が全日本には出てなかったね。」
野
「ウン。6月の全日本大学駅伝選考会ではエース中崎を故障で欠いて、6位大東と23秒差で7位に甘んじて、初出場を逃したが、中崎が出ていれば間違い無く全日本に出ていた。
もし帝京が全日本に出ていたら、5位以内に食い込んでいた可能性もなくはないな。中央・神大だって抜かれていたかもしれないよ。
帝京の喜多監督は全日本の文化放送のラジオ中継の解説をしていて、『来年は走りたいですね』と言っていたが、間違いなく来年全日本に初登場するんじゃないかな。」
馬
「ちなみにラジオ中継の学生OBの解説は、神大OB・6区区間新記録の中澤晃だった。」
野
「テレビのゲスト解説にも神大OBの渡邉聡と駒沢OBの佐藤裕之が出ていたね。箱根の学生OBゲストに誰が出てくるか楽しみだ。」
【よこすかシーサイド・府中・名古屋】
馬
「ついでに11月23日の『よこすかシーサイド』と『府中ハーフマラソン』、『名古屋ハーフマラソン』に触れておこうか。」
野
「この3つのロードレースは、『よこすか』は神大、『府中』は駒沢・中央・早稲田、『名古屋』は山梨学院の、それぞれ箱根エントリーメンバーの大詰めの選考レースになっている。
馬
「神大の場合、駅伝チームの各メンバーはこれに向けて全力を傾注してきてるんだね。」
野
「そう。神大では毎年この選考レースから無名の4年生が出てきて、箱根のアンカーを務めている。73回の今泉・74回の中里・75回の平野と文字どおり無名のランナーがよこすかから桧舞台に立った。」
馬
「神大の今回の『よこすか』では、相馬が1位で、辻原・田中・原田・野間・野々口・勝間・町野・吉野・中村の順で入った。ここまでが10番目。以下金原・三村・林で、浅尾が14番目。さらに園山・土谷修・小松・石本・上野・下村・木下・谷口と続く。スズケン・飯島は残念ながら故障で欠場した。」
野
「注目は1年生原田が4番目に入り急成長振りをアピールしたし、2年生田中が出雲の不振を挽回して見せたことだ。」
馬
「小松が神大内17番と、ちょっと心配だったが……。」
野
「うーん。全日本で途中から後退し10位となったが、調子を崩していたんだろうね。
この後、12月4日・5日に日体大・中大の記録会があり、各大学ともこの走りを見てから、最終的に14人の箱根エントリーメンバーを決めることになっているんだが、この日体大記録会で、小松がどういう走りを見せるか注目された。小松は13組に出場、前半先頭を引っ張るなど、意欲的なレースをし、29:15.5で4位に入り、徐々に調子を取り戻しつつあるようだ。14人のエントリメンバー入りは大丈夫だろう。」
馬
「オレ達は『よこすか』は3回目の観戦だが、『府中』は初めてだった。『よこすか』を見て記録確認してから、府中に2時間近くかけて駆けつけ、辛うじてゴールには間に合った。」
野
「府中では、神屋がトップで、すぐ後に西田がいた。3位から板山・池田・永井と3人続いて入り、6位に駒沢の島村、7位日大巽が入ってきた。その後に駒沢勢が前田・松下・平川・高橋と4人続いていた。」
馬
「この後も13位に中央池上、14位に駒沢布施と、中央と駒沢が続々と入って来て、これは凄いなーと思ったけどね。」
野
「たしかに、この両校が上位を多数占めて、これはかなりやるなと思わせた。
ただ、去年出ていたテクモや三井海上の実業団がほとんど出てない上に、同じく去年出ていた帝京・東海からはゼロ。また拓殖も主力が出てなく、駒沢・中央・早大・日大・農大が中心で、駒沢・中央が上位を占めるのは当然とも言えるけどね。」
馬
「府中のタイムは去年と比べてちょっと良くないようだが…。」
野
「うん。去年はやはり外人・実業団が引っ張っているんじゃないかな。今年は学生だけで、その分落ちていると思うよ。」
馬
「名古屋では、山梨古田が1:01:57と自己最高を出したようで、完全復活かな。」
野
「完全に復調したと見て良いんじゃないかな。西川も1:02:43とこちらも去年を若干上回る好走だったようだ。」
馬
「尾崎・尾池・カリウキが走ってないね?」
野
「カリウキは、23日の名古屋ハーフには出ず、28日のつくばマラソンの10kmに出て、1位になっている。つくばにはハーフもあったのに10kmに出ている。タイムは29:25と関東インカレで28:13を出している実力からすれば、全然良くない。ちょっとおかしいね。」
馬
「1年生の時、3区で区間賞と鮮烈デビューした後、パッタリと姿が見えなくなって、ファンをやきもきさせていた、松下康二がやっと出てきたね。」
野
「タイムは1:05:24で学内9位と、エントリーされるか微妙な順位だが、ようやく復活してきたようだね。」
馬
「3つのロードレースを比較して、どう思う?」
野
「そうだな。神大は小松がちょっと不安だったが、全体的にはそんなに悪くないな。タイムは、60分台が去年の12人に対し今回は9人だったが、61分台が5人から8人になっている。
上位10人の平均タイムは神大が60:44で、府中を走った駒沢が61:00、中央が61:14、名古屋の山梨が60:54になる(いずれもハーフを20kmに換算)。
府中の駒沢には大西が、中央では藤田・藤原・杉山、名古屋の山梨はカリウキ・尾崎・尾池など、主力が走ってないので単純に比較できないが、これらのチームと比べて神大は全く遜色無い。飛び抜けたエースは不在だが、粒が揃っており、総合力では勝るとも劣らない。期待して良いんじゃないかな。」
【箱根展望】
馬
「最後に、以上の出雲・全日本・よこすか府中のロードの結果を踏まえて、76回箱根駅伝の展望を簡単にしておこう。」
野
「まあ、秋以降の実績を踏まえると、常識的には駒沢・山梨・順天の三つ巴ということになるんだろうね。それに、神大・中央・帝京がどこまで迫るか、それに割って入るかが焦点になるだろうな。」
馬
「本命はどこだろう?」
野
「戦国駅伝と言われはじめて久しいが、今回は文字どおり、本命が不在だと思うね。
去年は駒沢が本命と言われながら優勝を逃し、その前2年間は神大が優勝候補筆頭と言われてそのとおり2連覇した。
今回は3強・準3強合わせて6強と言っても良いが、飛び抜けたチームは見当たらない。歴然とした実力の差はないよ。」
馬
「どこが勝ってもおかしくないということかな。」
野
「各チームとも、6人とか7人とかまで計算できても、10人きちんと揃ったチームが無い。それぞれ強力だが、ウィークポイントも持っているんじゃないかな。」
馬
「前回は順天の1年生が、予想外の活躍をして優勝に貢献したが…。」
野
「10人の戦力を揃えるのに1年生・2年生は不可欠だし、今回も1年生・2年生が鍵を握る可能性がある。
6強それぞれに、1年生・2年生が伸びて来ているようだし、意外な選手が飛び出してくるかもしれない。」
馬
「オレ達が応援する神大が良い成績を出すためには?」
野
「とにかく、勝つことを意識せず、『自分の走りをすれば、結果はおのずとついて来る』と考えた方が良いんじゃないかな?」
馬
「2連覇の時も、優勝という言葉は余り口にせず、自分の力を出し切ることに専念し、その結果優勝の栄冠を得た気がするね。」
野
「全日本の駒沢も3位狙いで走って、優勝を勝ち取った。平常心で走ることが大事だと思うな。」
馬
「14人のエントリーメンバーはもう間もなく、12月10日に正式発表されるが、オレ達なりにエントリー候補を勝手に挙げてみようか。」
野
「順天: 政綱4・佐藤4・沢田4・高橋3・宮井3・宮崎3・榊枝3・笠村3・入船2・岩水2・野口2・奥田2・坂井2
駒沢: 前田4・大西4・西田4・関根3・河野3・神屋2・揖斐2・高橋2・平川2・島村1・布施1・松下1・松村1
神大: 町野4・辻原4・小松4・野々口4・野間4・吉野4・中村4・勝間3・林3・相馬2・田中2・金原2・原田1・三村1・浅尾1・石本4・土谷2・園山1
山梨: 西川4・古田4・宮原4・黒岩4・大浜4・松下4・尾崎3・尾池3・清田2・カリウキ1・岩永・宮入1・清家1・安藤2・椎葉・松田・河野
中央: 藤田4・中川4・宇野4・板山3・永井3・木村3・藤村3・富田2・花田2・杉山2・奥山2・野村1・池上1・藤原1・中込1・池田1
帝京: 安生4・市川4・吉冨4・小川3・鎌浦3・喜多3・中崎2・北島2・谷川2・喜多村2・飛松1・仲田1」
馬
「このうち、順天宮崎・山梨尾池・中央藤田が最近姿を見せなかったり、調子を落としたりしているようで、帰趨が注目されるね。」
野
「箱根まで後1か月を切ったが、オーダーが12月29日に出るので、その時点でオレ達のトークも、改めて恒例の「直前大予想」をやることにしよう。」
1999年12月7日23:30