箱根駅伝野次馬談義(その1:レース展開直前大胆予想!)
 
箱根駅伝の展開の予想や過去のデータの特徴などについて、江戸時代に神奈川・戸塚・小田原・箱根をはじめ、東海道53次を歩いた弥次郎兵衛・喜多八の末裔の野次郎&馬八のお二人に登場してもらって、ご先祖の旅と同様に勝手気ままな話しをしてもらいました。彼らの独断と偏見の箱根談義は、どんなことになるやら・・・・・・・・。
 
 
 
野次郎
「さあ、いよいよ明日2日、箱根駅伝がスタートする。」
馬八
「おれ達が応援する神大が下馬評どおり2連覇を飾るのか、山梨学院が3年ぶり4度目の優勝成るのか、駒沢が初優勝達成出来るのか、楽しみだな。」
野次郎
「うん、この3強の争いになることは間違いないだろうな。」
 
【1区】
馬八
「明日のスタートの直前になってしまったが、区間ごとのポイントを予想してみようか。まず1区から。」
野次郎
「神大は予想通りの高津だ。山梨はワチーラが来ると思ったが、ハーフマラソンで良い記録を出した森政。駒沢も藤田幸則かと思ったが、予想が外れて西田で来た。この他注目は早稲田の佐藤敦之だな。1区は例年大きな差にはならない。高津が全日本と同じようにリードする可能性が高いにしても、まあ10秒から20秒程度かな。あるいは佐藤が頑張って区間賞なんてこともありうる。」
 
【2区】
馬八
「2区はさすがエースが揃ったね。」
野次郎
「花の2区は、神大が小松、山梨は古田、駒沢は藤田敦史と予想通りだ。3強の争いは、やはり古田が抜け出して、藤田・小松が追う展開になるのかな。しかし、実力が接近しているから2区で大差をつけるのは難しいだろう。
この他、中央小嶋、日大山本、順天堂三代、大東大池谷、早稲田梅木と、エースがずらっと並んでいる。区間賞争いも、熾烈になるだろう。山本・三代が何人抜きをやるかも見所の一つになるかもね。」
 
【3区】
馬八
「3区にも各チームは精鋭を並べているね。」
野次郎
「全日本で早稲田が1区・2区・3区で流れに乗ってトップに立ち、最終的に3位に入ったが、あの3区までの飛び出しのインパクトは強烈だった。皆あの早稲田の先行した姿が脳裏に焼きついているだろうから、今回はどのチームも先行して流れに乗ろうとしている。だから3区あたりまでは、かなりの混戦になるんじゃないか。
山梨はワチーラを3区に置いた、何故1区でなくここか?という疑問はあるが、これで3区が一つのポイントとなってきた。山梨が3区までにいくら貯金を作り、流れに乗せるかが今回の箱根の勝負の大きな分かれ目になる。3区までに神大と山梨の差が2分以内にとどまれば、神大はかなり有利になるんじゃないか。これが3〜4分以上開くことになると、山梨に流れが傾くと思う。
神大は野々口、駒沢は河野になっているが佐藤裕之に代わるだろう。どちらも出雲・全日本の両方で区間賞を取って調子を上げている。ワチーラにどこまで食らいついていくか見物だ。神大と駒沢は2区古田で差が出来ても、3区ワチーラとの差を最小限に食い止める必要がある。またワチーラが安定した走りを見せるかどうかも鍵だな。2区まで善戦する順天堂・日大も頑張りはここまでで、徐々に離されていくと思うな。」
 
【4区】
馬八
「4区もエース級が揃っていて、目が離せないよな。」
野次郎
「うん、そうなんだ。4区は神大は町野になっているが渡邊に代わるだろうし、山梨は中馬、駒沢は藤田幸則だ。中馬は故障で全日本を欠場したが、どの程度回復したのかがポイントだろう。中馬が完全復活なら、山梨はリードを保つ可能性が出てくる。渡邊・藤田がどこまで追い上げられるか。もし去年と同じようにこの4区で神大がトップに立つようだと神大は俄然優勢になってくる。」
 
【5区】
馬八
「いよいよ箱根の山登りだ。神大は1年生の勝間、山梨は横田、駒沢は足立だ。」
野次郎
「前回は神大の山登りスペシャリスト近藤重勝が2度目の区間賞を取り、神大の優勝を決定的にした。また山梨は区間13位、駒沢は区間15位と大ブレーキで、両チームはこれが最後まで響いた。特に山梨は神大との差がここで7分44秒も開いてしまって、総合での差8分18秒の殆どがここでついてしまった訳だ。今回は中央の尾方以外はこれといった登りの専門家はいないな。神大は勝間を、山梨は横田、駒沢は足立を配したが、いずれも初の山登りだ。これがどうなるか。勝間は山登りスペシャリスト近藤の高校の後輩(京都・洛南)にあたり、しっかりこつを伝授してもらっているかもね。足立は全日本で区間11位とブレーキになったが、山登りで汚名挽回できるか?いずれにせよ、今回の上りで、3強がどういう走りをしてみせるかによって、勝敗を左右することになりそうな気がするな。
もともと5区はタイム差が大きく出やすいところだ。区間1位のタイムから4分以上開いている人数を過去20年についてみると、10区間のうち、この5区山登りが148人と最も多い。早稲田は5区は前回と同じ酒井だが、4区まで相当頑張らないと往路優勝は難しくなる。中央は尾方で結構稼いでここで上位に上がってくる可能性もある。」
 
【6区】
馬八
「下りの6区は山梨・駒沢共に去年の経験者が走りそうだね。」
野次郎
「山下りは、神大が中澤、山梨が境田、駒沢が石花となっているが、駒沢は前回も下りを走った河合が代わって出るのは間違いない。河合は前回区間2位をとっており、境田も2度目の山下りで前回3位と二人とも今回の区間賞候補だろう。中澤は初めての箱根だが、前回も6区にノミネートされオーダー変更で出れなかったのだが、一応下りの準備は出来てるんじゃないか。だから山梨・駒沢の二人に大きく水を開けられることはないと思う。」
 
【7・8・9区】
馬八
「いよいよ山を下って終盤の7・8・9区だ」
野次郎
「7・8・9区に神大は、中野・大川・岩原を持ってきて、山梨は川崎・尾崎・西川、駒沢は前田・北田・吉田になっている。
神大大川は辻原に、駒沢前田は大西に代わると思う。駒沢は吉田が前回の山登りで脱水症状で区間15位とブレーキになり、今回は9区に回った。7・8区は前回と同じメンバーで復路全員区間2位という珍しい記録で復路優勝を飾ったメンバーだけに今回も復路ではかなりやると思う。
一方山梨の7・8・9区は、往路のメンバーに比べてやや力の差があるのは否めない。
神大は7区にキャプテン中野・9区岩原・10区高嶋と前回の優勝メンバーをもってきて、8区には出雲・全日本でいずれも区間2位と活躍した2年生辻原を置くだろうから、相当強力な布陣になる。往路でもし山梨にリードされても、この7・8・9区で挽回可能だと思うよ。だから6区までに山梨が、どれくらいリードしているかが問題だ。駒沢も去年と同じような走りを見せれば、山梨を捉えることが出来るかもしれない。」
 
【10区アンカー】
馬八
「ということは3強の争いは、終盤までかなりもつれて、アンカーでの逆転ってことも可能性がある訳だ。」
野次郎
「過去20年間のデータで見ると、アンカー10区での逆転は、62回の順天堂の1回だけだね。後は9区までには逆転している。何区からトップを維持しているかを見ると、この20年では1区からずっと1位というのはない。2区からずっとトップというのが59回の日体、60回の早稲田、64回の順天堂、70回の山梨の4校のみ、3区からが67回の大東、68回の山梨、4区からは前回73回の神大など3校、5区からは2校、6区からは1校、7区から1校、8区から1校、9区から4校となっている。9区での逆転が4回と結構多いが、全体で見るとやはり往路でトップに立ってそのまま優勝というケースの方が12校と半分以上だ。
しかし、今回は久々にアンカー逆転もありうるかもしれないな。」
馬八
「10区のメンバーは神大が大槻、山梨は大崎、駒沢は松本だが・・・」
野次郎
「神大は高嶋に代わる可能性が高い。4年生として最後を飾って欲しいね。大崎は全日本で区間賞を取っており、強力だ。松本は出雲・全日本と出てないが、去年のアンカーで区間2位に入っており、力はある。」
 
【ビハインドの逆転】
馬八
「それじゃ、何分差ぐらいだったらひっくり返せるんだろうか?」
野次郎
「これまでも、箱根では、3分以上離されたら、優勝は難しくなると言われている。優勝したチームが最大何分差のビハインドをひっくり返しているかを、過去20年間の実際のデータで見ると、最大は62回で優勝した順天堂が5区で早稲田に6分32秒差をつけられていた例がある。これは復路で順天堂が区間4位・1位・2位・2位・2位と追い上げ、アンカー10区で逆転して優勝したもの。早稲田の7区11位のブレークにも助けられている。この他、63回にも同じ順天堂がやはり5区で3分55秒差つけられたのをひっくり返している。あと、55回には順天堂が2区での3分31秒差を、56回に日体大が2区での3分37秒差を逆転している。この他はすべて3分以内の差をひっくり返しているんだ。だから3分以上のリードを許したらまず逆転は無理というのが箱根の常識なんだ。」
 
【神大の優勝は?】
馬八
「こうして見てくると、神大は去年のような8分差での楽勝は望めないか?」
野次郎
「復路、特に10区は、まさに戦国駅伝の名のとおり、抜きつ抜かれつになるかもね。」
馬八
「おれ達の応援する神大は本当に優勝できるかな?」
野次郎
「面白いデータがあるんだ。」
馬八
「なんだ?」
野次郎
「過去11年間で、新聞や陸上競技雑誌などのマスコミの予想が外れたのは、1回だけなんだ。63回から73回までで、はずれたのは70回だけで、この時は、早稲田が前年の69回に花田・武井・櫛部の花のトリオ+渡辺康幸+小林正幹で8年ぶりに優勝しており、それに小林雅幸が加わり、スター級がずらっと揃って、2連覇絶対確実と見られていた。が、山梨が井幡・マヤカ・中村・飯島・下山・藤脇・高見・小椋・黒木・尾方のメンバーで区間賞4人、区間2位5人、区間3位1人という超安定した走りで往路復路の完全優勝、10:59:13と初めて11時間を切る大会記録を作ったんだ。
後の10回はすべてマスコミの予想通りの優勝となっている。
だから今回も神大が優勝候補筆頭に上げられていることからすると、神大がやはり有利かなと思うが……。
報知の記者座談会では、神大の安定感は15チーム1と評価する記者もいるが、一方全日本で山梨の4区のブレーキを除けば、神大よりタイムは良いとして、体調万全なら山梨の優勝は堅いと見る記者もいる。
また報知の「ドラマを作る男たち」についているレーダーチャート(スピード・スタミナ・安定性・チームワーク・箱根実績の5項目を5点満点で評価)の評点を合計してみると、神大が23点でトップ、次いで山梨の22点、駒沢20.5点、中央19.5点の順になっている。前回の評点でも神大は23点でトップになっていて、その評点どおり初優勝を飾った。今年も評点どおり優勝できるかどうか?
箱根は1人や2人のスターがいても駄目、全員が20kmをきちんと走りらないと。結局は総合力の勝負だからね。
いずれにしても、ブレーキを絶対に出さないこと、これが優勝への絶対条件だろうね。」
 
【シード権争い】
馬八
「最後にシード権争いはどう見る?」
野次郎
「神大・山梨・駒沢・中央・早稲田・大東・拓殖・順天堂あたりは、上位が固いと見られており、そうすると残るは椅子は1個だけになってしまう。これを東洋・東海・日体・専修・帝京・関東学院・日大の7校が争うことになる、まさに熾烈な戦いになるね。上位校のうち3強以外の中央・早稲田・大東・拓殖・順天堂もちょっとブレーキが出たら、下位校に食われてシード落ちする可能性は十分ある。シード権争いも目が離せないよ。」